女の子だって羽ばたけるのよ！

進路希望調査、記入完了！

そのころ私は、母の過去について ほとんど知らなかったから……。
母の心を傷つけたかもしれないことを、平気で言ってしまった。

「どうしてなの？ お母さんは ひどい！
お母さんは大学へ行ったじゃないの！
私だって、お母さんと同じように、大学へ行きたいよ。
お母さんと同じように、自分の夢に向かって生きたいよっ！」

・・・

父の実家は、農家だった。
で、父は、当時の一般常識では、その跡継ぎたるべき長男だった。
だけど父は、商業高校へ進学した。
そして卒業後に、７歳も年上の母と結婚した。

母は東京の大学を卒業し、父と出会った時は すでに、今の仕事に就いていた。
それで結婚した当初は、母が働いて家計を支え、父は家事を しながら、独学して公務員になった。

そこまでしか聞いてなかった。 
だけど、だから、私の両親は、よその夫婦と違う。
社会の お手本になる、素晴らしいカップルなんだって、尊敬してたのよ！

・・・

「……わかったわ。もう反対しない。
つぐみ、お母さんも応援するから、頑張りなさい」
ふう。と、ため息まじりながら、母は応えてくれた。

やっとこさ、母の了解を得ることができた。
やった！ うれしい！ やった！
ようやく両親の合意を得たのよ！

進路調査用紙には

Ｋ高へ進学希望。
大学へ進学するため。

うんと丁寧に書いて、保護者印を もらった。