女の子だって羽ばたけるのよ！

進学と町の事情

市内には、高校が４つ あった。

１つは、母がイチオシだった女子高校。
主に 家政学を学べる高校よ。
当時は、女子しか入れなかった。
女子しか入れないなんて、思えば これも差別よね。

そして、女子高の生徒は、たいがい在学中に お見合いするの。
で、卒業すると、お嫁入りする。
それが当時の、一般常識だったのよ。

もう１つは、商業高校。
商店を営む家の子たちが 進学していた。
とはいえ、商店街は、さびれる一方だったからね。
卒業生の多くは、都心から進出してきたデパートやスーパーマーケットに就職していたわ。
ここは男女共学。
だけど、圧倒的に男子の数が多かった。

もう１つは、工業高校。
私たちが生まれたころから、町には工場が増えていたの。
よって、いくらでも労働力が ほしい。
工業高校を卒業した生徒は、工場に就職する道が約束されていたの。
男子高よ。女子は受験できない。

職人町の子どもたちは、昔は中学を卒業すると、すぐに修行の道に入ったの。
だけど世の中は、工場で安い品物が 大量生産される時代。
工業高校へ進む人が増えていた。

そして、最後の１つが、普通科高校。
大学進学を目指す高校よ。
男子高だったところで、女子は どんなに望んでも、入ることができなかったの。
ところが 前年度から、男女共学の試みが始まっていたの！
新市長さんが、新風を吹き込んで くださったのよ！

地域の政策って、私たちの進学にも、大きく関係するのよ。

私たちが暮らす地域は、長いこと 職人町の人々に支えられて、栄えてきたの。
だから、古くからのならい・・・で、職人町の有力者が 市長を つとめていたの。
で、前の市長は、どんどん工場を誘致して、地域を豊かにした 立派な人だと、言われていたの。

ところが前市長は、工場誘致にあたり、不正な おカネのもんだいに関係したことが 明るみになり、任期を終える前に辞任したの。
そして、新しい市長さんが立ったというわけ。

前市長の不正を明るみにしたのは、東京の記者さんよ。
でも なぜか、このことは地方新聞にだけ、小さく載ったわ。
偉い人と 信用できる人って、必ずしも同じじゃないのね。

話を戻すわね。
で、普通科高校を男女共学にしよう！
と、女子に道を拓ひらいてくださったのが、その 新しい市長さん よ。

感慨かんがい深い出来事だったわ。
なぜって、女子にも 自分の意志で進める道が 拓けたんですもの！

だから私は、普通科高校へ進学さえできたら、大学へ行けるの！
日本全国、どこの大学へも行けるの！

頑張りさえ すれば━━。