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中学3年生になりました!

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春。

校庭の桜は まだ五分咲き ってところかな。
でもね。私の心はウキウキの春!
満開の春よ!

なぜって私、中学3年生になりました。
本格的に進路を決める時が 来たのよ!

……の、はずだったんだけど……。

・・・

「つぐみちゃんは当然、女子高だろ?」
「え?」
また菓世かぜくんだ。

夕の会の時間。
道明寺どうみょうじ菓世かぜが、ななめ前の席から わざわざ振り向いて、話しかけてきた。
配布された進路調査用紙をヒラヒラさせながら。
しかも、ニコニコしながら。
「つぐみちゃんは、女の子だからな。
しっかり花嫁修業して、いい嫁さんになれ」

まったくもう!
同じクラスの、同い年の子どもに、なんだって 私の進路を決めつけられなきゃ いけないの?

おあいにくさま!
私はもう、自分の進路を決めてるの。

私が目指すところは新天地!
この町を出て行くの。
うんと遠くの大学へ行くの。
そのためには、高校進学が、大切な第一歩なのよ!

父さんも母さんも、きっと賛成してくれるはず。
その時は自信を持って、そう信じていた。

ところが!
ものごとは、そううまくは いかなかった。
私の目の前で、あの両親が 言い合いを始めるんだもの。

こんなこと私、予想もしていなかった。

・・・

「つぐみは 女子高で十分よ」

その日の夜。
進路調査用紙を前にして、これが母の、最初の言葉だった。

「ええっ! でも、私……」
あんまり驚いて、次の言葉が 喉の奥に ひっかかってしまった。

母は続けて
「この町の女子高は、花嫁修業の学校ですもの。
女子高に進んで、つぐみのことを大切にしてくださる人と結婚して、幸せになりなさい。
お母さんみたいに、わざわざ苦労する道を 選ぶことないわ」

やめてよ!
お母さんが、私のお母さんが……菓世かぜくんなんかと 同じこと言うなんて!
誰か、誰か、ウソだと言ってえええええ━━。
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