45 / 72
里親さがし〜母猫は、わが家へ遊びに来ていた子猫だった〜
しおりを挟む
集めた情報からわかった。
赤ちゃんたちのお母さんは
今年の2月ごろから6月なかばあたりまで
ほぼ毎日
うちの猫たちに会いに来ていた子猫だった。
はじめは、お父さんとお母さんに連れられて、わが家へやってきた。
お父さんとお母さんに見守られながら、うちの猫たちと会っていた。
そうしてやがて、独り立ちしたのだと思う。
ひとりで遊びに来るようになった。
美貌の三毛猫で、私は『ミケ』と名づけた。
毎日のように、ひとりでわが家を訪れては網戸ごしに、
うちの猫たちとお喋りを楽しんでいたミケ。
そんな様子から、
ミケだけでも保護できないかな。
餌付けしたら捕まえることができるかな、と。
見かけるたびに私は、フードをあげることをはじめた。
『ミケは今どこに棲んでいるの?
女の子で、まだ子どもだし。
ひとりで生きるのは厳しいよ。
よかったら、私たちの家族にならない?』
フードをあげるたびに呼びかけた。
なんだけど……いつも
触れられるぎりぎりのところでサッと逃げる。
ミケは、けっして人には触れさせない子だった。
2月、3月、4月、5月、6月……。
ぎりぎりの距離が、ぎりぎりのところで縮まらないまま
時が過ぎていった。
そうして
7月ごろから
ミケの姿をパッタリ見かけなくなった。
猫は縄張り意識の強い生き物だから
生後半年を過ぎたミケは
新天地を求めて旅立ったのだと
私は思っていたのだけれど……
ミケは、赤ちゃんを産んでいたのだった。
わが家から直線距離で50メートルほど離れたところにある住宅地。
家屋の周りは草木が生い茂っていて、荒れ放題になっている。
隣家の方のお話によると、2年くらい前から空き家になっているとのこと。
ミケの様子は、その空き家の隣家の方が、よくご存知だった。
隣家の方が話してくださったことが、以下。
・・・・・
まだ子どもと思われる三毛猫が、空き家の庭に棲み着いた。
しばらくの間は、日中はどこかへ出かけて行き、
帰って来ると、縁側の下でくつろいでいた。
その三毛猫が、7月のはじめに赤ちゃんを産んだ。
赤ちゃんを産んで以後は、ほとんどその場を離れることがなく
赤ちゃんにお乳をあげたり、からだを舐めてあげたりしていた。
母親になった子猫は、たちまちやせ細っていった。
このまま、ほとんど飲まず食わずで赤ちゃんにお乳をあげていたのでは、
いずれ母猫は死んでしまう。
そんな事態になったら、赤ちゃんも、死んでしまう。
保護してあげたいけれど、空き家の所有者に連絡する術がわからない。
許可無しに入り込むにしても、草木が邪魔で入り込めない。
困りはてて、地元の犬猫ボランティア団体に連絡した。
けれど、そのボランティア団体のお返事は
『申し訳ないのですが、お力になれません。
同じようなご連絡・ご相談が、多数ございます。
しかし当方では、
飼育崩壊して行き場を無くした犬猫や
保健所に持ち込まれ、殺処分を待つばかりの犬猫を
優先的に引き取り、保護しています。
そういう事情の犬猫たちで、シェルターは満杯なのです。
そんなわけですから、
ご連絡いただいた野良猫の捕獲から保護までは、
あなた様のご判断にお任せするほかありません』
ならば、どうしたらよいのだろう?
ますます困って頭をかかえていたところ
とうとう母猫が姿を消してしまった。
赤ちゃんだけが残されて、
ひとかたまりになって鳴いていた。
雨が降り続いており、赤ちゃんたちが心配だったけれど
あの草木だらけの中に入り込む気には
どうしてもなれず、辛かった。
やきもきしながら1日経った。
母猫の姿は無し。
2日目には、赤ちゃんたちの鳴き声がいっそう大きくなり
空腹でたまらないのだと思った。
それでも母猫の姿は無し。
雨は、止む気配もない。
そして3日目の夕刻。
止まない雨の中、
赤ちゃんたちの鳴き声が消えた。
赤ちゃんたちが、居なくなっていた。
とうとう、みんな、死んでしまったのだろう。
結局、気を揉むだけで、
何もしてあげなかった。
自分を責めた。
・・・
その日、その時刻に。
その赤ちゃんたちは、
わが家の庭に居たのだった。
赤ちゃんたちのお母さんは
今年の2月ごろから6月なかばあたりまで
ほぼ毎日
うちの猫たちに会いに来ていた子猫だった。
はじめは、お父さんとお母さんに連れられて、わが家へやってきた。
お父さんとお母さんに見守られながら、うちの猫たちと会っていた。
そうしてやがて、独り立ちしたのだと思う。
ひとりで遊びに来るようになった。
美貌の三毛猫で、私は『ミケ』と名づけた。
毎日のように、ひとりでわが家を訪れては網戸ごしに、
うちの猫たちとお喋りを楽しんでいたミケ。
そんな様子から、
ミケだけでも保護できないかな。
餌付けしたら捕まえることができるかな、と。
見かけるたびに私は、フードをあげることをはじめた。
『ミケは今どこに棲んでいるの?
女の子で、まだ子どもだし。
ひとりで生きるのは厳しいよ。
よかったら、私たちの家族にならない?』
フードをあげるたびに呼びかけた。
なんだけど……いつも
触れられるぎりぎりのところでサッと逃げる。
ミケは、けっして人には触れさせない子だった。
2月、3月、4月、5月、6月……。
ぎりぎりの距離が、ぎりぎりのところで縮まらないまま
時が過ぎていった。
そうして
7月ごろから
ミケの姿をパッタリ見かけなくなった。
猫は縄張り意識の強い生き物だから
生後半年を過ぎたミケは
新天地を求めて旅立ったのだと
私は思っていたのだけれど……
ミケは、赤ちゃんを産んでいたのだった。
わが家から直線距離で50メートルほど離れたところにある住宅地。
家屋の周りは草木が生い茂っていて、荒れ放題になっている。
隣家の方のお話によると、2年くらい前から空き家になっているとのこと。
ミケの様子は、その空き家の隣家の方が、よくご存知だった。
隣家の方が話してくださったことが、以下。
・・・・・
まだ子どもと思われる三毛猫が、空き家の庭に棲み着いた。
しばらくの間は、日中はどこかへ出かけて行き、
帰って来ると、縁側の下でくつろいでいた。
その三毛猫が、7月のはじめに赤ちゃんを産んだ。
赤ちゃんを産んで以後は、ほとんどその場を離れることがなく
赤ちゃんにお乳をあげたり、からだを舐めてあげたりしていた。
母親になった子猫は、たちまちやせ細っていった。
このまま、ほとんど飲まず食わずで赤ちゃんにお乳をあげていたのでは、
いずれ母猫は死んでしまう。
そんな事態になったら、赤ちゃんも、死んでしまう。
保護してあげたいけれど、空き家の所有者に連絡する術がわからない。
許可無しに入り込むにしても、草木が邪魔で入り込めない。
困りはてて、地元の犬猫ボランティア団体に連絡した。
けれど、そのボランティア団体のお返事は
『申し訳ないのですが、お力になれません。
同じようなご連絡・ご相談が、多数ございます。
しかし当方では、
飼育崩壊して行き場を無くした犬猫や
保健所に持ち込まれ、殺処分を待つばかりの犬猫を
優先的に引き取り、保護しています。
そういう事情の犬猫たちで、シェルターは満杯なのです。
そんなわけですから、
ご連絡いただいた野良猫の捕獲から保護までは、
あなた様のご判断にお任せするほかありません』
ならば、どうしたらよいのだろう?
ますます困って頭をかかえていたところ
とうとう母猫が姿を消してしまった。
赤ちゃんだけが残されて、
ひとかたまりになって鳴いていた。
雨が降り続いており、赤ちゃんたちが心配だったけれど
あの草木だらけの中に入り込む気には
どうしてもなれず、辛かった。
やきもきしながら1日経った。
母猫の姿は無し。
2日目には、赤ちゃんたちの鳴き声がいっそう大きくなり
空腹でたまらないのだと思った。
それでも母猫の姿は無し。
雨は、止む気配もない。
そして3日目の夕刻。
止まない雨の中、
赤ちゃんたちの鳴き声が消えた。
赤ちゃんたちが、居なくなっていた。
とうとう、みんな、死んでしまったのだろう。
結局、気を揉むだけで、
何もしてあげなかった。
自分を責めた。
・・・
その日、その時刻に。
その赤ちゃんたちは、
わが家の庭に居たのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
挿絵挿入の仕方[アルファポリス]
マッハ柴犬
エッセイ・ノンフィクション
小説の画像の挿入に暫し悩んだので、記録代わりに置いておきます。
ネットで検索しても出てこないし、アルファポリスのヘルプにも乗せておいて欲しいところ。
挿し絵 挿絵 挿入 画像 入れ方 乗せ方 サイズ 仕様
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
6人分の一汁三菜作ってましたが、義両親との関係が破綻したので終了しました
山河 枝
エッセイ・ノンフィクション
日常的に、義両親&筆者夫婦&子2人の夕飯(一汁三菜)を用意してました。
・惣菜はOK。
・汁物はほぼ必須。
・でも味噌汁は駄目。
・二日連続で同じようなおかずを出してはならない。
・時期によっては、大量に同じ野菜を消費し続けなくてはならない。
……という何となく生まれたルールに従っていましたが、心身の調子を崩したので、2024年末に同居を終了しました。
ほぼ自分用献立メモと、あとは家庭内のいざこざや愚痴です。
筆者のしょうもない悩みを鼻で笑っていただければ幸いです。
たまに自作品の進捗状況や、子どもに所望された即興童話をさらしてます。
※子どもが夏休みの時などは品数を減らしています。
※途中から諸事情により上記の条件を一部無視しています。
(旧題:「6人分の一汁三菜作ってます」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる