トマレとミコの ひなまつり

おひなさまを 作ろう！

１２

何の役に立つのか さっぱりわからなかった、もとゴミの たまごパッケージは、パレットになった。

つぐみは、たまごが入っていた くぼみごとに、絵の具を しぼり出す。
絵の具の色は、赤、青、黄、白。
「この、四つよっつの色から、いろんな色を作り出せるの。
ミコちゃん、あなたが やってみましょう」

「えっ。ミコが？  
うんっ！ ミコ、やってみる。がんばるわ！」
本来の役目を終えた割りばしで、色を まぜあわせるのは、ミコの役目になった。
水を適量加えながら、色の組み合わせを変えながら、まぜていく……。

すると、あら不思議。あらあら不思議。
ピンク。緑。紫。茶。オレンジ。藤。ヤマブキ……。
次々に、いろんな色が生まれた！
この、いろんな色が、おひなさまたちの 髪飾りや、着物の模様になるのだ。

ミコは、やることなすこと、すべてがうれしくて、楽しくて たまらない。
「つぐみちゃん。 ミコ、びっくりよ。
ミコも、まほうつかいに なったわ！」

・・・・・・

その一方で、司つかさとトマレは、というと……。

「おおっと、しまった！
これは、おひなさんの腕だった。
つぐみぃ、わるいっ。切り落としちまった」
誰よりもモタモタして、さっぱり仕事が進まないのが 司だった。

「司さんてば、不器用だなあ。
切る仕事は、アタシがやりますから。
司さんは、食事の支度してくださいよ。
そろそろ昼どきですし……」

トマレに言われて司は
「はいはいはいはい。わかったよ。
わかりましたよ。やれやれ、たすかった。
ミコ、なにが食べたい？」

「ええとね。ミコは、はんばーぐがいいな。
おばあちゃんの はんばーぐ。ミコ、だあいすきよ」

「あのねえ、ミコ。
何度でも言わせてもらうが、『おばあちゃん』だけは、やめてくれっ！」

・・・

司の商売は、もと中学校の教師だ。
現職時代の専門教科は、家庭科。
料理の腕前は、なかなかのものである。
教師を辞めた後は、家庭コンサルタント なる会社を興し、社長をしている。
二人の息子がいる、よき母親でもあった。