トマレとミコの ひなまつり

みるく♪

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おひなさまが ほしいの

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「ねえ、おかあさん。
ミコも、おひなさまがほしいよ。
おひなさまが、ほしいよう」

「うっるさい子だねえ、まったく。
そんな高いモノ、買えるわけが ないでしょ!
だいたいね、買えたとしても、うちは1DKのアパートだ。
そんなモノを置いたら、アタシたちの居場所が なくなっちゃうでしょうが!」

「いやよう。いやよう。
ねえ、おかあさん。おひなさま買ってえ」

「わかんない子だねえ。
だまらないと、お母さん本気で怒るよっ!」

「うわあああああん」

・・・・・・

せっかくの休日なんだ。
せっかく一日中 ゴロ寝していたかったのに。
子どもってのは、世話がやけるもんだねえ。

言っては ならない言葉を飲み下したものの、次の言葉は 思わず声に出てしまった。
「いいかげんにしな!
お母さん、今日は一日寝ていたいんだ。
あんたはそこで、好きなだけ泣いてな!」

「うわあああああああん。
うわあああああああん」

・・・・・・

あーあ。
まーた やっちまったよ……。
ビッグなトマレの小さなハートが、ずきんずきんと痛む。

でもさあ。仕事が辛くて、からだが くたくたなんだ。
ミコ、悪い母さんで ごめんねえ。
トマレは心の中で娘にわびながら、ゴロリと横になった。

「うわあん。うわあん。うわぁぁ……」

そうして、娘の泣き声が、だんだんと遠くなり……。

泣きじゃくっているのは娘なのか?
遠い過去の、幼い自分自身なのか?
どちらなのかも、わからなくなり……。

トマレの意識は 眠りの中に吸いこまれていった。

 ・・・・・・

トマレ、33歳。
わけあって、シングルマザー。

過去には魅惑的だった女性美は、その面影すら はるかに遠のき、
いまや見るからに たくましい女丈夫。

ビッグ・マザー、トマレ。
宅配便トラックの 運転手をしていた。
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