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私の猛獣狩り〜笠置シヅ子さんの大冒険〜

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笠置シヅ子さんのことは、
私は朝ドラ「ブギウギ」で知った。
あんな超個性的で面白い歌が、
昭和の、あの時代に歌われていたなんて凄い。

義母や母は、
「昔テレビのコマーシャルに出演していたよ。
面白いオバチャンだよ」
と言っていた。
でも歌手だったとは、
ドラマを観るまで知らなかったとのこと。

でも、じいちゃんやばあちゃんなら、
笠置さんが歌手だったころを知っているはず。
なんだけど……残念ながら
ボケてしまっているから話は聞けなかった。

なにしろ去年の秋に帰省した時のこと。
ばあちゃんたら、ブギウギの主題歌が始まると
踊るお人形さんに向かって、真剣に呼びかけていた。
「あらあら、オネエさんたら可哀想に。
手も足もむき出しじゃないの! 
風邪ひいちゃうよ!
早く長袖の服を着なさい。長ズボンをはきなさい!
ああ……オネエさんには聞こえないのかねえ。
ミルク、あのオネエさんに早く
アンタの服を貸してあげなさい!」

ばあちゃんは、人も人形もリアルも仮想も
区別がつかなくなっていた。
じいちゃんは……ただニコニコと微笑むだけだった。

☆☆☆

趣里さん演じる福来スズ子(笠置シヅ子)さんを通して
私はあの時代を思い、あの歌を聴く。

ほかにどんな歌が歌われていたのか
知りたくて探して
見つけた!
YouTubeに笠置シヅ子トピックがあった。
収録されている歌、たーくさんあった。

その中に「私の猛獣狩り」という歌があり
聴いて衝撃を受けた。
これ凄い!
まるで映画なんだもの。
それもジャングルの奥地が舞台の、大冒険。

・・・物語のあらすじ・・・

いつものように猟銃を担いで
キリマンジャロのジャングルの奥地ヘ
シヅ子さんは、たったひとりで出かけて行きました。

そこで遭遇した猛獣たちは
ゾウ、ライオン、キリン、シマウマ、
ゴリラ、ゴジラ、チンパンジー……

シヅ子さんは、どれから仕留めようか迷い
勇気を出して
ライオン目がけて猟銃をズドンと一発!

ところが、タマは見事にはずれてしまい
怒ったライオンに追いかけられます。
そこでひたすら逃げるのですが
とうとう断崖絶壁に追い詰められてしまいました。

もう絶体絶命です。
後方にライオン、前方にはゴリラ
崖の下にはワニの群れ……

シヅ子さんはナムアミダブツととなえます。

と、そこへ、天の助けが
「あ~あ~あ~」

(以下略)

・・・

はじめワクワク。
そして迫る危険に
ドキドキ、ハラハラ……絶体絶命。
そしてラストは、大笑い。
もう私はこの歌に夢中!

こんな手に汗握るような物語が
わずか3分の歌になっていて
作詞・作曲・編曲の 原六朗さん、
歌った笠置シヅ子さん
ただものではないと思った。

私の猛獣狩り
発表された時期は、私が調べた資料によると
1955年(昭和30年)
なので、じいちゃん ばあちゃんは10代後半の青春時代。
笠置さんが踊り歌うのを、
直接見たことあったかもしれない。

そして昭和30年は
最愛のエイスケさんが亡くなって
8年過ぎたころ。
深い悲しみを抱きながらも
エイスケさんとの間に生まれた愛娘
エイ子さんを愛して愛して

こんなに面白くて素晴らしい歌を
同じ時代を生きる人たちに
笠置さんは届けていた。
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