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それから3ヶ月後。
お婆さんのご主人が亡くなりました。
それから。
お婆さんは毎日のように、わが家を訪ねて来るようになりました。
この後のおはなしは、主に、お婆さんから聞いたおはなしです。
私がお婆さんと出会った時より、ずっとずっと、ずっと昔のおはなしから始まります。
・・・
お婆さんは、個人で野良猫の保護ボランティアをしている人でした。
瀕死の野良猫を、助けたことが、きっかけです。
ここニュータウンへ越してくる前のお婆さんは、
東京都内でも比較的緑地の多い、とある高級住宅街に住んでいました。
ご主人の事業が成功していて、広い敷地に大きな家。
ご主人には専属の運転手がいて、運転手の送り迎えで仕事に出かけていました。
お婆さんは専業主婦でした。
が、家事は全て、家政婦さんがしてくれます。
ですからお婆さんは、子育てをするほかは、お友だちと食事会や演劇会……。
やがて、子どもたちが独立して家を出た後には、
お友だちと出かけるくらいしか、やることが無くなってしまいました。
『お婆さん』と、私は書いていますが、当時は、まだまだ若い女性です。
そのころから、『私も社会に役立つ仕事をしたい』と、強く願うようになりました。
そんなある日のこと。
お婆さんが車を運転して買い物に出かけた時。
車道と歩道の境い目に『土まみれのかたまり』が転がっているのを見つけました。
近づくにつれ、そのかたまりは『猫』で、
もがくように前あしを動かしていることがわかりました。
お婆さんは、考えるより先に車をとめました。
一番左側の車線を運転していて、車をとめやすかったことが幸いでした。
買い物なんか後回しです!
すぐさま猫を抱き上げ、助手席に乗せると、最寄りの動物病院ヘ連れて行きました。
お婆さんとの奇跡的な出会いによって、
その猫は助かりました。
そうして、お婆さん家の子どもになりました。
お婆さんは その時以後、
地域の野良猫に、心を寄せるようになったのです。
『かわいそうな野良猫を、私にできる限り助けてあげよう』
と、決心しました。
大都会にも、野良猫はいます。
ゴキブリやネズミを狩り、人が出すゴミをあさり、
子を産み育て、一生懸命に生きています。
お婆さんは、助けたい野良猫が居そうな場所を見て回りました。
普通なら見過ごしてしまいがちでも、
目的を持ち、強く意識して行動すると、見つけることができるんですね。
放っておけば死んでしまうであろう、弱って動けずにいる野良猫を、
1匹、また1匹と、お婆さんは見つけていったのです。
そして病院ヘ運び、お医者さんに診てもらいました。
無事に回復できた猫たちが、お婆さん家の子どもになりました。
当時は大きな家に住んでいましたから、猫のための部屋を決め、そこで可愛がっていました。
やがて保護猫の数が10匹をこえると、猫たちのために、
専用の庭付きハウスを建てました。
朝、ご主人を送り出すと、
早速お婆さんは、猫たちのお世話をします。
そして猫たちと遊びました。
もちろん、予防接種やワクチン、シャンプー……、やるべきことをきちんとやりました。
もちろん、トイレ掃除や食事の世話だって、きちんとやりました。
それが、お婆さんの日課であり、生き甲斐になったのです。
ご主人も、愛する奥様を、優しく温かく見守ってくれました。
お婆さんは、猫たちを愛しました。
心をこめてお世話しました。
住み心地の良いハウス。おもいっきり遊べる芝生の庭。
美味しいごはん。新鮮な水。
お婆さんに出逢わなかったら、野垂れ死にするところだった猫たちは、
どんなに嬉しく、幸せだったことでしょう。
・・・
ところが、そんな暮らしが一変しました。
ご主人の事業がうまくいかなくなり、
事業も、家も土地も、手放すことになってしまったのです。
お婆さんのご主人が亡くなりました。
それから。
お婆さんは毎日のように、わが家を訪ねて来るようになりました。
この後のおはなしは、主に、お婆さんから聞いたおはなしです。
私がお婆さんと出会った時より、ずっとずっと、ずっと昔のおはなしから始まります。
・・・
お婆さんは、個人で野良猫の保護ボランティアをしている人でした。
瀕死の野良猫を、助けたことが、きっかけです。
ここニュータウンへ越してくる前のお婆さんは、
東京都内でも比較的緑地の多い、とある高級住宅街に住んでいました。
ご主人の事業が成功していて、広い敷地に大きな家。
ご主人には専属の運転手がいて、運転手の送り迎えで仕事に出かけていました。
お婆さんは専業主婦でした。
が、家事は全て、家政婦さんがしてくれます。
ですからお婆さんは、子育てをするほかは、お友だちと食事会や演劇会……。
やがて、子どもたちが独立して家を出た後には、
お友だちと出かけるくらいしか、やることが無くなってしまいました。
『お婆さん』と、私は書いていますが、当時は、まだまだ若い女性です。
そのころから、『私も社会に役立つ仕事をしたい』と、強く願うようになりました。
そんなある日のこと。
お婆さんが車を運転して買い物に出かけた時。
車道と歩道の境い目に『土まみれのかたまり』が転がっているのを見つけました。
近づくにつれ、そのかたまりは『猫』で、
もがくように前あしを動かしていることがわかりました。
お婆さんは、考えるより先に車をとめました。
一番左側の車線を運転していて、車をとめやすかったことが幸いでした。
買い物なんか後回しです!
すぐさま猫を抱き上げ、助手席に乗せると、最寄りの動物病院ヘ連れて行きました。
お婆さんとの奇跡的な出会いによって、
その猫は助かりました。
そうして、お婆さん家の子どもになりました。
お婆さんは その時以後、
地域の野良猫に、心を寄せるようになったのです。
『かわいそうな野良猫を、私にできる限り助けてあげよう』
と、決心しました。
大都会にも、野良猫はいます。
ゴキブリやネズミを狩り、人が出すゴミをあさり、
子を産み育て、一生懸命に生きています。
お婆さんは、助けたい野良猫が居そうな場所を見て回りました。
普通なら見過ごしてしまいがちでも、
目的を持ち、強く意識して行動すると、見つけることができるんですね。
放っておけば死んでしまうであろう、弱って動けずにいる野良猫を、
1匹、また1匹と、お婆さんは見つけていったのです。
そして病院ヘ運び、お医者さんに診てもらいました。
無事に回復できた猫たちが、お婆さん家の子どもになりました。
当時は大きな家に住んでいましたから、猫のための部屋を決め、そこで可愛がっていました。
やがて保護猫の数が10匹をこえると、猫たちのために、
専用の庭付きハウスを建てました。
朝、ご主人を送り出すと、
早速お婆さんは、猫たちのお世話をします。
そして猫たちと遊びました。
もちろん、予防接種やワクチン、シャンプー……、やるべきことをきちんとやりました。
もちろん、トイレ掃除や食事の世話だって、きちんとやりました。
それが、お婆さんの日課であり、生き甲斐になったのです。
ご主人も、愛する奥様を、優しく温かく見守ってくれました。
お婆さんは、猫たちを愛しました。
心をこめてお世話しました。
住み心地の良いハウス。おもいっきり遊べる芝生の庭。
美味しいごはん。新鮮な水。
お婆さんに出逢わなかったら、野垂れ死にするところだった猫たちは、
どんなに嬉しく、幸せだったことでしょう。
・・・
ところが、そんな暮らしが一変しました。
ご主人の事業がうまくいかなくなり、
事業も、家も土地も、手放すことになってしまったのです。
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