2011年3月11日 金曜日

みるく♪

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2011年3月11日 ①

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2011年3月11日、金曜日。
時刻は 午前8時を少し過ぎたところ。

「それじゃあ、荷物の準備は任せたよ。
じゃっ、行って来まぁす」
「はいはい了解なりよ。
行ってらっさい。バイバーーーイ!」

夫の大賀おおが君が 仕事に出かけた。
私は早速 明日の準備にとりかかる。
「四日ぶんの下着でしょ。洗面用具でしょ。
着替えは春物と冬物と、両方持って行くことにしよう。
かさばるけど仕方ないね。向こうに着いてから困るよりはね」
ひとつひとつ確かめながら、旅行カバンに入れていく。

どうしても顔の筋肉がゆるんでくるのを止められない。
ひとりごとが止まらない。

だって、だって、いよいよ明日なんだもの!
3月12日 土曜日。
私は"生まれて初めて見る故郷"へ、里帰りするんだよ!
大賀おおが君もいっしょだよ。

楽しみ。ああ楽しみ。めっちゃ楽しみ!

帰省地は、福島県 相馬市。
両親が、現在 暮らしている町なんだけど、私は 一度も見たことがないんだ。
なぜかというと、私が結婚した後に、両親が移り住んだ町だから、だよ。
父が公務員で、県内各地を転勤していたからね。

私が暮らした土地は、会津若松市、猪苗代町、喜多方市、福島市、須賀川市、郡山市。
会津地方も中通り地方も良いところ。なんだけど、浜通りの地に住んだことは 一度もなかった。

私の故郷は、両親が住んでいる土地。
だから現在は、相馬市が私の故郷。

久々に両親と会えることが楽しみだし、知らない故郷へ初めて行くことも、楽しみで仕方ない。

母は電話してくるたびに、とてもうれしそうに話していたもんね。
「会津も中通りも よい所だったけど、松川浦も素晴らしいよ。
父さんも母さんも、海の近くに住むのは初めてだからね。毎日が新鮮だよ。
天気のよい日は 父さんといっしょに、海辺を散歩するんだ。
近くに漁港があってね。
カレイ、ヒラメ、タコ、アナゴ、メバル、ホッキ貝……。
父さんも母さんも、魚や貝が大好きだから、毎日美味しく食べてるよ」

美味しい お魚でしょ。美味しい貝でしょ。
うれしいなあ。うれしいなあ。
そんなこと考えながら、るんるんと旅支度をしていたら、電話のベルが鳴った。

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