時の織り糸

コジマサトシ

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41(ハヤカワ)

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 ケータイの表示で時刻は18時ちょうど。本社スタッフ退勤時間。明らかに興奮気味のユカが走ってくる。

「ハヤカワ!やったねえ!」
「おお…あんまり、大きな声を出さないでくれるか…何か悪事を働いたかのように見られる」

「これってさ、ハヤカワの言ってた事からすると『未来を、間接的に変えた。変える事に成功した』って事だよね!」
「ああ。あの通達の後、気になって腕時計の表示を見たんだが、まったく減っていなかったよ。まあそれはそれで、時間表示が増えも減りもしない時計も不思議でしかないけどな。正直な所、不気味で気持ちが悪いよ」

 まあ、それは。とユカが続ける。

「とりあえーず、ご飯行こ、ご飯行こ。終わりでしょ。今日は」
「う、え、あ…はい、あがります…」
「あなたのユカさんは、早番あがりで、ぴゅーっとここまで来たのですよ?」
「いや、早番のあがりは19時のはずだ。今18時だぞ。どんな力使ったんだ」

 とりあえず、夕食を食べに行く前に、少し話をしてからの方が良い。祝勝会には…まだ早い。

「ユカ」
「はあい?」
「とりあえず、ちょっとヒゲカフェ行こう。んで、久々に飲みにでも行くか」
「いいねー、いいねー。じゃあ、少しヒゲで話をしてから行きますか」

 話が早くて助かる、という気持ちを抱きながら、ヒゲカフェまでゆっくり一緒に歩いて向かった。

………。

出来れば、全てを、はなしたくないが。
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