32 / 56
32(ユカ)
しおりを挟む
だいたいの事は解った気がする。やるべき事は解る。でもやり方が解らない。
もどかしい。
自分の経営層との距離は、今まで近いと思い込んでいた。ただそれはチヤホヤされていただけだったのだ。何にもあのジジイ達の事を解っていなかった。会長もニコニコしてる姿しか見た事が無いし、今思えば『いつも何考えているんだか、よく解らない存在』だ。社長相手だけかな、何となくでも『正しく解っていた』ような気がするのは。
いったい、あたしなんかに、何が出来るっていうのか。部下の育成とお客様への対応はずっと磨き続けてきて、自分は日本中で見ても店長として3本の指には入っていると思っていたけど。もちろん自称。そして今回、それは何の役にも立たない。
ただ、ハヤカワが話してくれた年表からすれば、何もしなければ、あたしは2006年に退職する。その後、おそらくずっと働く事なく時が過ぎていく。
「…ハヤカワさあ…あのさ…」
「ん?なんだ?」
「何をすれば良いのか解ったけど。何をすれば良いのか解らない」
「そりゃ、いきなりそんな良い方法が思いつく訳ない。俺もノープランだよ…」
気がつけばテーブルが、何処から落ちるしずくで、黒くなっていた。頬がぬるい。私の瞳からだった事には、すぐには気づけなかった。
「その特殊な…涙の流し方を見るのは2回目?だな。声も出さない、表情も変えない。目から、ただこぼれ落ちる…そんな泣き方」
「言うな…ハヤカワ…自分が泣いている事を認めたくない…」
「1回目にその場面に遭遇した時も、そう言ってたよ。ユカは。確かあの時は」
「それもお願いだから言わないで、ハヤカワ」
「解った」
ただ、黙ってこちらを見ているハヤカワが、困ったような、怒っているような、悲しいような、そんな顔をしている事だけが、頭にあった。
もどかしい。
自分の経営層との距離は、今まで近いと思い込んでいた。ただそれはチヤホヤされていただけだったのだ。何にもあのジジイ達の事を解っていなかった。会長もニコニコしてる姿しか見た事が無いし、今思えば『いつも何考えているんだか、よく解らない存在』だ。社長相手だけかな、何となくでも『正しく解っていた』ような気がするのは。
いったい、あたしなんかに、何が出来るっていうのか。部下の育成とお客様への対応はずっと磨き続けてきて、自分は日本中で見ても店長として3本の指には入っていると思っていたけど。もちろん自称。そして今回、それは何の役にも立たない。
ただ、ハヤカワが話してくれた年表からすれば、何もしなければ、あたしは2006年に退職する。その後、おそらくずっと働く事なく時が過ぎていく。
「…ハヤカワさあ…あのさ…」
「ん?なんだ?」
「何をすれば良いのか解ったけど。何をすれば良いのか解らない」
「そりゃ、いきなりそんな良い方法が思いつく訳ない。俺もノープランだよ…」
気がつけばテーブルが、何処から落ちるしずくで、黒くなっていた。頬がぬるい。私の瞳からだった事には、すぐには気づけなかった。
「その特殊な…涙の流し方を見るのは2回目?だな。声も出さない、表情も変えない。目から、ただこぼれ落ちる…そんな泣き方」
「言うな…ハヤカワ…自分が泣いている事を認めたくない…」
「1回目にその場面に遭遇した時も、そう言ってたよ。ユカは。確かあの時は」
「それもお願いだから言わないで、ハヤカワ」
「解った」
ただ、黙ってこちらを見ているハヤカワが、困ったような、怒っているような、悲しいような、そんな顔をしている事だけが、頭にあった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鎌倉最後の日
もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる