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31(ハヤカワ)
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「恐らく、誰かが会長と社長が断裂するように、動いたとしか考えられない」
「…普通に考えれば、他のジジイ経営陣?それとも怪しいコンサル?合ってるかな?あたしの考え…」
「俺も、そのどちらかだと思う。あるいは両方」
「あのコンサルは社長とは関係が良く無さそうだけど、会長とは古い付き合いだって聞いたことあるよ」
そうなのだ。社長はともかく、会長とあのコンサルはアパレル事業が始まったタイミングからずっと9年間一緒にやってきたはずなのだ。社員に対して、無意味や理不尽にキレたりするから、あいつを好きな従業員は1人もいなかったけど、社長以外の経営幹部はあのジジイを、やたらひいきにしていたのだ。
「じゃあ、全部予定通り…なのかな、あのコンサルジジイの。さっきの…ハヤカワの話だと、その後、社長になってるんだよね…?しかも会長は病気で経営から退いて。でも他の経営陣はそのままで」
「ああ、少なくとも経営幹部とコンサルの利害は一致していたと考える事も出来る」
「利害って?」
「経営幹部の思惑は、今までの様に、特に何もせず美味しい思いをしたい。いざとなれば、多額の金を得てからバイバイ。コンサルは社長が実権を握ったら自分が契約を打ち切られるのが解っていた。結構高い金払っていたらしいから」
ユカは、天井を見上げる。そこには丸いペンダントライトがあるだけ。
「あーあ。何か馬鹿らしくなってきた。必死に店で働いて、お客様から貰ったお金がそんな風に使われているなんて」
「俺も同じ気持ちだよ。直接お金を受け取っている訳じゃないけど、俺が企画した商品を気に入ってお金を出して買ってくれたと思っている。そして現場はそれを頑張っておすすめして販売してくれている。なんなんだよ…って思っているよ」
「社長…それを全部解ってくれていたからこその、さっきの話なのかな?年寄りがどうとか」
「毎週末、どこかの店には、短い時間でも必ず顔を出して、店が混んだらレジ業務とか品だしを自ら率先してやるような社長だからな。全部お見通しなんだと思うし、感じる所もあると思う」
つまりだ。社長は今の経営幹部や怪しいコンサルを、どうにかして、どこかのタイミングで排除し、健全な体制にしたかった。そして逆に社長にとっての敵達は、それに気がついていた。となると、会長をどちらが自分達に引き込むか…その争いになるはずだ。そして普通に考えれば、そもそも血が繋がっている、会長と社長を引き裂くには、工作活動が必要。そしてそれが反社長軍団からすれば、見事に上手くいった。そして社長はクビになった。そういうストーリーなのだろう。
自分なりに頭の中の整理がある程度ついたタイミングで、突然ユカは言った。
「あのさ…さっきは会長と社長が本気でケンカするのは難しい、って思ったけど、そんな事ないのかも知れない…」
「え?……ユカ、続けてくれ」
「多分だけど…簡単だよ。例えば周りが、口を合わせて『年寄り排除、と言っている対象を会長まで含めて』社長が社内に言い回っている、とか。会長のごひいきのコンサルを、社長が社内に批判しまくっていて、コンサル自体が会長に泣きつく、とか。常務とかも同じ。いきなりぶっ壊すのは無理でも、さっき言ってた『ヒビ』みたいなモノは、工夫すれば、入れられるんじゃないかな」
「なるほど…少しずつ会長と社長の間に、ヒビを入れていって…つまり確執の始まりってやつか…そして。幹部排除や改革が事実上動きはじめたタイミングが、崩壊のXデー、って事か」
となると、やる事が見えてきた。社長と会長の間に『ヒビ』が入ったなら、すぐ埋めてやる。ちょっとや、そっとじゃ『ヒビ』が入らないほど、2人の関係性を強めてもらう。ただ問題なのは…。
ユカが言った。
「問題はさ…どうやって、社長と会長に『何があっても、変な噂があっても、お互いを信じて!』って伝えるか、だね」
ユカの想像力や察する力が、レベルアップしている。違和感を、覚えるほどに。
「…普通に考えれば、他のジジイ経営陣?それとも怪しいコンサル?合ってるかな?あたしの考え…」
「俺も、そのどちらかだと思う。あるいは両方」
「あのコンサルは社長とは関係が良く無さそうだけど、会長とは古い付き合いだって聞いたことあるよ」
そうなのだ。社長はともかく、会長とあのコンサルはアパレル事業が始まったタイミングからずっと9年間一緒にやってきたはずなのだ。社員に対して、無意味や理不尽にキレたりするから、あいつを好きな従業員は1人もいなかったけど、社長以外の経営幹部はあのジジイを、やたらひいきにしていたのだ。
「じゃあ、全部予定通り…なのかな、あのコンサルジジイの。さっきの…ハヤカワの話だと、その後、社長になってるんだよね…?しかも会長は病気で経営から退いて。でも他の経営陣はそのままで」
「ああ、少なくとも経営幹部とコンサルの利害は一致していたと考える事も出来る」
「利害って?」
「経営幹部の思惑は、今までの様に、特に何もせず美味しい思いをしたい。いざとなれば、多額の金を得てからバイバイ。コンサルは社長が実権を握ったら自分が契約を打ち切られるのが解っていた。結構高い金払っていたらしいから」
ユカは、天井を見上げる。そこには丸いペンダントライトがあるだけ。
「あーあ。何か馬鹿らしくなってきた。必死に店で働いて、お客様から貰ったお金がそんな風に使われているなんて」
「俺も同じ気持ちだよ。直接お金を受け取っている訳じゃないけど、俺が企画した商品を気に入ってお金を出して買ってくれたと思っている。そして現場はそれを頑張っておすすめして販売してくれている。なんなんだよ…って思っているよ」
「社長…それを全部解ってくれていたからこその、さっきの話なのかな?年寄りがどうとか」
「毎週末、どこかの店には、短い時間でも必ず顔を出して、店が混んだらレジ業務とか品だしを自ら率先してやるような社長だからな。全部お見通しなんだと思うし、感じる所もあると思う」
つまりだ。社長は今の経営幹部や怪しいコンサルを、どうにかして、どこかのタイミングで排除し、健全な体制にしたかった。そして逆に社長にとっての敵達は、それに気がついていた。となると、会長をどちらが自分達に引き込むか…その争いになるはずだ。そして普通に考えれば、そもそも血が繋がっている、会長と社長を引き裂くには、工作活動が必要。そしてそれが反社長軍団からすれば、見事に上手くいった。そして社長はクビになった。そういうストーリーなのだろう。
自分なりに頭の中の整理がある程度ついたタイミングで、突然ユカは言った。
「あのさ…さっきは会長と社長が本気でケンカするのは難しい、って思ったけど、そんな事ないのかも知れない…」
「え?……ユカ、続けてくれ」
「多分だけど…簡単だよ。例えば周りが、口を合わせて『年寄り排除、と言っている対象を会長まで含めて』社長が社内に言い回っている、とか。会長のごひいきのコンサルを、社長が社内に批判しまくっていて、コンサル自体が会長に泣きつく、とか。常務とかも同じ。いきなりぶっ壊すのは無理でも、さっき言ってた『ヒビ』みたいなモノは、工夫すれば、入れられるんじゃないかな」
「なるほど…少しずつ会長と社長の間に、ヒビを入れていって…つまり確執の始まりってやつか…そして。幹部排除や改革が事実上動きはじめたタイミングが、崩壊のXデー、って事か」
となると、やる事が見えてきた。社長と会長の間に『ヒビ』が入ったなら、すぐ埋めてやる。ちょっとや、そっとじゃ『ヒビ』が入らないほど、2人の関係性を強めてもらう。ただ問題なのは…。
ユカが言った。
「問題はさ…どうやって、社長と会長に『何があっても、変な噂があっても、お互いを信じて!』って伝えるか、だね」
ユカの想像力や察する力が、レベルアップしている。違和感を、覚えるほどに。
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