8 / 56
08(ハヤカワ)
しおりを挟む
「ちょっと待ってくれ、ユカ」
「何をもったいぶっているのだね、ハヤカワオジサン。早く写真くらい見せてよ?」
「……。いや、未来からスマホを持ってくるなんて、そんな都合の良い話は無かったみたいだ」
「何の話?スマホ?なに?よくわかんないや」
えっと確か…iPhoneが日本での初発売は、2008年、だったか?スマホ何て知らないのも仕方ない。
「えっと…ユカは、スマホ…いやケータイは持ってるか?」
「もっちろん!これこれ!オキニイリですよ。…変なとこ見ないでよ?」
これはまさしく、当時のケータイ。あの頃にしては珍しく折りたたみ式じゃないストレート式のケータイ。縦長で全体的にボタンなども紅白に彩られたもの…そして思ったよりもボロボロだ。どうせ地面にガンガン落としたりしているんだろう。確かにこの時代のケータイは丈夫だったような気もするけど…それにしたって扱いが悪すぎる気もするが。
ユカは、わーわー、ごちゃごちゃずっと言っているが、すでに俺に順応し始めている。でも、その方が都合が良いのかも知れない。『未来から来た』を信じる人間など、きっとそう簡単にはいない。ただ…何かしらの感覚や確信のようなモノが一応ユカにはあるから、俺の話を信じるし…信じてみようとするし、会話が通じるのかもしれない。
「よくわかんないけどさ、未来の記憶があるなら、いっぱいお金稼げるんじゃないの?大金持ちになれるよ」
「ん…。なんかそれはやっちゃいけない気がする。ペナルティがありそう」
「何それ?ペナルティ?…はい?」
「よく解らないし、確信も無いんだけど…俺は何かを為すために、この時代に戻って来たんじゃ無いか、って思うんだよ。忘れてしまったモノを取り戻すのが目的とか…なんとか」
(ハヤカワちょっとキモいな…)というユカの声が聞こえてきたような気がするが…多分、果たすべき目的に関係の無い行動や、私利私欲に任せた行動をした時点で、俺は五十歳のオジサンへと瞬時に逆戻りしてしまうような気がする。なぜそう思っているのかはよく解らないが、せっかく戻って来られたのだから、俺は自分のピークだった二十代を、もう一度、出来る限り満喫したいと正直な所思うし、ここからの選択も間違えずに進む事ができれば、もしかしたら五十歳の俺は、少し違う形、マシな形になるんじゃないか?…とはいえ、何をどうしていくべきか…。
「あっ?ハヤカワ!もうカイギの時間だ!あたし行ってくる!」
「おお…悪い。じゃあまた後で」
「ハヤカワとは、社長に深夜に呼ばれる、超ブラックなカイギで合流だからね!?ちゃんと来てよ?」
「はいはい」
月1回の経営陣が、ユカを招集しての会議の事はよく覚えている。ただ、社長とユカと俺で…深夜に会議?それはあまり想像がつかない。
しかし…なんで、あんな高いヒールで走れるのか、ずっと不思議なのだが、あっという間に後ろ姿は見えなくなった。なんとなく腕時計に目をやった。この時計が真新しい事が、やけに2005年に戻った事を感じさせる。
「何をもったいぶっているのだね、ハヤカワオジサン。早く写真くらい見せてよ?」
「……。いや、未来からスマホを持ってくるなんて、そんな都合の良い話は無かったみたいだ」
「何の話?スマホ?なに?よくわかんないや」
えっと確か…iPhoneが日本での初発売は、2008年、だったか?スマホ何て知らないのも仕方ない。
「えっと…ユカは、スマホ…いやケータイは持ってるか?」
「もっちろん!これこれ!オキニイリですよ。…変なとこ見ないでよ?」
これはまさしく、当時のケータイ。あの頃にしては珍しく折りたたみ式じゃないストレート式のケータイ。縦長で全体的にボタンなども紅白に彩られたもの…そして思ったよりもボロボロだ。どうせ地面にガンガン落としたりしているんだろう。確かにこの時代のケータイは丈夫だったような気もするけど…それにしたって扱いが悪すぎる気もするが。
ユカは、わーわー、ごちゃごちゃずっと言っているが、すでに俺に順応し始めている。でも、その方が都合が良いのかも知れない。『未来から来た』を信じる人間など、きっとそう簡単にはいない。ただ…何かしらの感覚や確信のようなモノが一応ユカにはあるから、俺の話を信じるし…信じてみようとするし、会話が通じるのかもしれない。
「よくわかんないけどさ、未来の記憶があるなら、いっぱいお金稼げるんじゃないの?大金持ちになれるよ」
「ん…。なんかそれはやっちゃいけない気がする。ペナルティがありそう」
「何それ?ペナルティ?…はい?」
「よく解らないし、確信も無いんだけど…俺は何かを為すために、この時代に戻って来たんじゃ無いか、って思うんだよ。忘れてしまったモノを取り戻すのが目的とか…なんとか」
(ハヤカワちょっとキモいな…)というユカの声が聞こえてきたような気がするが…多分、果たすべき目的に関係の無い行動や、私利私欲に任せた行動をした時点で、俺は五十歳のオジサンへと瞬時に逆戻りしてしまうような気がする。なぜそう思っているのかはよく解らないが、せっかく戻って来られたのだから、俺は自分のピークだった二十代を、もう一度、出来る限り満喫したいと正直な所思うし、ここからの選択も間違えずに進む事ができれば、もしかしたら五十歳の俺は、少し違う形、マシな形になるんじゃないか?…とはいえ、何をどうしていくべきか…。
「あっ?ハヤカワ!もうカイギの時間だ!あたし行ってくる!」
「おお…悪い。じゃあまた後で」
「ハヤカワとは、社長に深夜に呼ばれる、超ブラックなカイギで合流だからね!?ちゃんと来てよ?」
「はいはい」
月1回の経営陣が、ユカを招集しての会議の事はよく覚えている。ただ、社長とユカと俺で…深夜に会議?それはあまり想像がつかない。
しかし…なんで、あんな高いヒールで走れるのか、ずっと不思議なのだが、あっという間に後ろ姿は見えなくなった。なんとなく腕時計に目をやった。この時計が真新しい事が、やけに2005年に戻った事を感じさせる。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
カラー・マン
上杉 裕泉 (Yusen Uesugi)
SF
とある金曜日の夕方のこと。週末のゴルフの予定を楽しみにする朝倉祐二外務省長官のもとに、一人の対外惑星大使が現れる。その女性――水野は、ウルサゴ人と適切な関係を築くため、彼らの身にまとう色を覚えろと言う。朝倉は、機械の力と特訓により見違えるように色を見分けることのができるようになり、ついに親睦パーティーへと乗り込むのだが……
No One's Glory -もうひとりの物語-
はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `)
よろしくお願い申し上げます
男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。
医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。
男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく……
手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。
採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。
各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した……
申し訳ございませんm(_ _)m
不定期投稿になります。
本業多忙のため、しばらく連載休止します。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる