上 下
40 / 42

新婚旅行2

しおりを挟む
三枝さんの車はチャイルドシートが用意してあった。小さい子どもでもいるんだろうか?と思っていたらレンタカーだよ。と教えてくれた。ホテルでスーツケースを預けてから私達は三枝さんの自宅へと向かった。

着いた場所は上を見上げるほどの高層のコンドミニアムだった。その大きさに驚いていたのに周りも同じような建物がいっぱいで迷子になりそうだ…リッチとセキュリティがいいから…とここに決めたらしい。

高所恐怖症の私にはかなり怖い26階の自宅に案内され奥様に出迎えられた。奥様は現地で結婚した方だけど先生が日本人ということもあり、日本語は上手だった。お子様はいないから望夢に会えて嬉しいと言ってくれた。

長距離移動は疲れただろうから少しのんびりしてから観光に行こうと言ってくれた。先生と奥様は朝食を食べてくるから…と外出している間、私達はゲストルームで少しだけ休ませてもらった。
私達が朝早く来たから家で食べないの?と聞くと基本、自炊をする人が少なくてほぼ外食の家も少なくないそうだ。
亘くんが住んでた家は前回帰った時に片付けてしまったのでないけど、ここからあまり遠くないコンドミニアムに住んでたみたいだ。

望夢は飛行機であまり寝れず疲れたのか少しぐずったけど寝てしまった。

「詩織はどこ行きたい?」

「やっぱりマーライオンみたい」と言うと、やっぱりそこだよな。まぁ…有名だけど…本当は夜景が綺麗な所とかあるけど、詩織は高い所、苦手だからな。と笑われてしまった。

日本から持ってきた観光ガイドを広げ、どういう順番にしようかと話していたら先生達が帰ってきた。

望夢が起きたら行こうと言われ、4人でどの順番で行こうか?と話をしてる間に目を覚ました。

まずはマーライオンパークに行こうと地下鉄に乗って向かった。シンガポールは地下鉄やバスがたくさん走っていて不便なくあちこち行ける。自家用車は税金がかなり高く持っている人が少ないと聞いた。国土が狭いからみたい。

マーライオンパークはやはり観光客が多かったけど、シンガポールのシンボルを見れて私は満足だったけど望夢は全く興味なし…その後、お昼だからと行ったフードコートの方が大喜びされてしまった…

三枝さん達と別れてホテルに戻った。
望夢は亘くんに抱っこされながら、もう夢の中にいた。慣れない場所でもたくさん遊んで、たくさん食べて幸せそうに微笑みながら寝ている姿に2人で顔を見合わせた。

明日は動物園、明後日は水族館と望夢に日本とは違う自然を感じて欲しいから。
それでも亘くんに抱きしめられて眠れるこの瞬間がやっぱり幸せだと感じながら目を閉じた。




昨日早く寝たせいか早くから目が覚めた。望夢は朝から元気で一安心。旅行で熱が出るかもと少し心配だった。流石お医者さんの亘くんは目が覚めた望夢を必ず診察してくれる。過保護かな?と言いながらも…でもなんだかとても幸せそうだった。

ホテルで朝食を取ってからタクシーに乗って動物園にやってきた。右も左もわからない私は亘くんの案内で行きたい動物も見れたし、トラムという乗り物に乗って移動したり、美味しいランチも食べれて満足していたが、もしかして誰かと来たことがあったんじゃないか…と少し気になってしまった。そりゃ私と離れて過ごしてるうちにそういう人ができてもおかしくはない。見た目もかっこいいし…お医者さんだし…じゃなきゃこんなに案内なんてできないんじゃないかって、そんな考えごとをしていたらつまづいて派手に転んでしまった。
「いたっ」

「詩織、どうした?」望夢のベビーカーを押して前を歩いていた亘くんが戻ってきて手を差し伸べて起こしてくれた。

「どこが痛い?どこ打った」

「ごめんね。大丈夫だから。望夢もありがとう。いい子いい子してくれるの」
子供にまで心配されて、なんだか情けなくなった。涙が出そうになって近くに見えたトイレに駆け込んだ。

亘くんにそういう人がいたっていいじゃない。私が亘くんから逃げたんだから。今は結婚してくれたし、左手の結婚指輪を指でなぞってみる。亘くんは本当に私でよかったんだろうか?望夢がいるから責任で一緒にいてくれてるのかもしれない。本当はこのままシンガポールにいたかったんじゃないか…どんどん自己嫌悪に落ちていく気がした。手のひらが痛くて目を向けると赤く擦りむけて、ところどころ出血していた。膝も痛くてスカートをめくると膝からも血が出ていた。
手を洗って、膝もティッシュで拭いて絆創膏を貼った。鏡を見ると涙で濡れていた顔を洗った。情けなくてまた涙が溢れてきた。せっかくの新婚旅行だったのに…なんでこんな気持ち…

いつまでもこんな所にいても仕方がない。もう一度顔を洗ってトイレを出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

冷たい外科医の心を溶かしたのは

みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。 《あらすじ》 都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。 アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。 ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。 元々ベリカに掲載していました。 昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。

貴方を愛することできますか?

詩織
恋愛
中学生の時にある出来事がおき、そのことで心に傷がある結乃。 大人になっても、そのことが忘れられず今も考えてしまいながら、日々生活を送る

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。 2024年4月21日 公開 2024年4月21日 完結 ☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

恋煩いの幸せレシピ ~社長と秘密の恋始めます~

神原オホカミ【書籍発売中】
恋愛
会社に内緒でダブルワークをしている芽生は、アルバイト先の居酒屋で自身が勤める会社の社長に遭遇。 一般社員の顔なんて覚えていないはずと思っていたのが間違いで、気が付けば、クビの代わりに週末に家政婦の仕事をすることに!? 美味しいご飯と家族と仕事と夢。 能天気色気無し女子が、横暴な俺様社長と繰り広げる、お料理恋愛ラブコメ。 ※注意※ 2020年執筆作品 ◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。 ◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。 ◆大変申し訳ありませんが不定期更新です。また、予告なく非公開にすることがあります。 ◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。 ◆カクヨムさん/エブリスタさん/なろうさんでも掲載してます。

処理中です...