上 下
34 / 42

久しぶりの休息

しおりを挟む
「亘くんありがとう。久しぶりにゆっくりできた」

「それはよかった。少し顔色も良くなったな。じゃあご飯食べて。食べれるだけでいいから」

「わぁーどーしたのこれ?」
テーブルの上にはお寿司とお吸い物と茶碗蒸しまであった。

「詩織、お寿司好きだっただろ?だから頼んだ。本当は病院だからダメなんだろうけど卓也に頼んだ」

「卓也…さんに?」

「あぁ…西の名前だ。あいつはそれなりにここでは偉いみたいだからな。ほら望夢が起きる前に食べよう。俺も寿司なんて久しぶりだから」そう言って2人で食べながら話をした。

どうして亘くんの側からいなくなったのか、美華さんのこと…そして札幌に行ってからのこと、仕事のこと、沙代子さんとあやちゃんの家でお世話になることになって今現在もお世話になっていること…
「沙代子さんとあやちゃんがいなかったら1人でなんて産めなかったかもしれないし育てていくなんて…産んでからも育休も取らせてくれたし、今は内科の外来勤務で夜勤もないのよ。今回の入院もそう。2人が手助けしてくれたの。そうじゃなきゃ小児科で働いて知識があっても何もできなかった…亘くんにも会えなかった…」

「詩織、俺も沙代子さんと絢さんに会いたい。お礼言わないとな今までお世話になったって」

「亘くん、ありがとう。探してくれて、また会えるなんて思ってなかった。あ!そういえばあやちゃんのいとこなんだけど高林先生って亘くん知ってる?」

「大学の時に後輩で高林っていたが、その高林か?」

「多分そうだと思う。飲みに連れてってもらったことがあるって言ってたよ」

「いとこ…なのか?」

「そう。今、実家を継ぐために私と同じ病院で脳外科の先生してる。東京を出るとき亘くんに連絡しようとしたら、もう連絡取れなかったって言ってたよ。また会いたいって。亘くんが脳外科医だったから、自分も脳外科医になったって、めちゃくちゃ尊敬してたよ」

「そうか…あの時は誰とも連絡取りたくなくて…何も言わずにスマホ変えたからな。高林に連絡取れる?」

「うん。あやちゃんに聞けばすぐに教えてくれると思うよ」

「そうか…俺も会いたいな。せっかくだから」

「ふぇーん。えーん」

「望夢、起きちゃった?よく寝てたね。いい子いい子」泣いてる望夢を抱っこして背中をトントンと撫でてあげる。

「望夢はお利口さんだったな。ご飯食べれるようになったら点滴外れるから、もうちょっと頑張ろ。望夢、パパの所来るか?おいで」
亘くんが手を伸ばすと
「ぁーいっ」望夢も手を伸ばした。
「望夢はパパが好きか。お利口さんだ」
ほら、たかいたかーい
「キャッ、キャッ」

最近、ますます大きくなって抱っこも大変な望夢を軽々とたかいたかいしてくれる亘くんを見て嬉しくて涙が一粒溢れた。

亘くんが来てくれて私の心も安定した。頼れる人がいる。寄りかかれることが自分にとってどれだけ心強いか…

あれから2日、望夢はご飯も食べられるようになったので点滴が外れた。西先生からあと1日様子をみて大丈夫なら明日退院しましょう。と声をかけてもらった。

望夢の今までの写真もビデオも見てもらった。亘くんが知らない私と望夢…どの写真も2人だった。その写真を切ない顔で見ていた亘くんの提案で3人で写真を撮った。

亘くんは、西先生が特別許可を出してくれたので、ずっと側にいてくれて色んな話をした。
もちろんこれからの3人の話ばかりだった。

亘くんは今シンガポールで恩師がいる病院で働いているそうだ。私が見つかったと西先生から連絡を受けて、すぐに来てくれたのでもう一度戻らないといけないこと…大体1ヶ月くらいで戻ってこれるから、その時は籍を入れて一緒に暮らそうと言ってくれた。

でも私には気になってることがあった…
「亘くん、お父さんとお母さんはいいの?私と結婚するの許してくれる?それと…望夢のことも…何も言ってないし…」

「詩織、大丈夫だから。父さんも母さんも詩織と結婚するって思ってたし、医院長親子のことを知った時も激怒してた。詩織が行方不明になってた時も心配してた。俺がシンガポールに行くのを反対もしてたんだ。詩織が見つからないのに日本を出るなんてバカなのか?って…望夢がいるって知ったら喜ぶよ。だって初孫だよ。母さんなんて溺愛するよ。だから心配しなくても大丈夫だから。な!」
そう言って頭を撫でてくれてホッとした。

望夢はすっかり亘くんに懐いてる。亘くんがシンガポールに行ったらどーするんだろう?大丈夫かな?

望夢は亘くんとシャワーを浴びてスッキリして帰ってきた。
「望夢、パパと一緒でチャプチャプしたの。よかったね!明日には退院できるからね。沙代子さんとあやちゃんも待ってるよ。会えるの楽しみだね」
望夢はニコニコご機嫌だ。

夕方、あやちゃんから明日は休み取ったから早く帰っておいでね。と連絡をもらった。2人には再会した後に亘くんの話をした。ビデオ通話にして亘くんにも会ってもらった。2人には今まで、本当に感謝してもしたりないほど、自分と望夢を守ってくれた。
亘くんも2人に会うのを楽しみにしている。けど…亘くんにはサプライズを用意している。明日お家に帰ってからのお楽しみだ。
今日も望夢のベッドには私が隣に置いたソファーベッドには亘くんが…と思っていたら、亘くんが抱っこして望夢を寝かせてくれて、ベッドに寝かせてくれた。

「詩織はこっち」そう言って背後から抱きしめてくれて横になった。背中から伝わる亘くんは暖かく、眠気が襲ってきたが、くるっと向き直し亘くんを見上げた。「亘くんと会えて幸せ」本音が溢れた。「俺も詩織を抱きしめることができて幸せだ」そう言ってくれた唇が重なった。触れるだけの口付けは物足りないけど…今は我慢だね。お互いに言いながら抱きしめあった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

冷たい外科医の心を溶かしたのは

みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。 《あらすじ》 都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。 アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。 ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。 元々ベリカに掲載していました。 昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。

貴方を愛することできますか?

詩織
恋愛
中学生の時にある出来事がおき、そのことで心に傷がある結乃。 大人になっても、そのことが忘れられず今も考えてしまいながら、日々生活を送る

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。 2024年4月21日 公開 2024年4月21日 完結 ☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...