神さま…幸せになりたい…

大事な家族

沙代子さんとあやちゃんには両親のこと、姉のことを話した。事故で3人が亡くなってしまったこと。私だけが生き残ってしまったこと。2人共一緒に泣いて抱きしめてくれた。

沙代子さんは「詩織ちゃんが生きていてくれたから私達は会えることができたのよ。きっと詩織ちゃんが生きてる意味があるの。しかもこんな天使で宝の望夢にも出会えたのよ。孫ができたみたいで嬉しいんだから」2人がいてくれることが何よりも心強かった。

亘くんにますます似てきた望夢はどこに行っても「かわいい」と言われ、本人もニコニコと嬉しそうにしている。

毎日バタバタとしながらも充実した毎日を送っていた。
お母さんみたいな沙代子さんがいてくれて、お姉さんみたいなあやちゃんがいてくれて…大事な自分の命よりも大切な望夢がいてくれて、これ以上ないくらい幸せな気持ちで毎日を過ごしていた。

ある日の休憩中に社食でお弁当を食べてると紺色のスクラブを着た先生達がやってきた。

「ねぇねぇ、今度来る先生ってどんな人？」
「脳外科医で優秀だって。そんでもってまだ30代、しかもイケメンで独身みたいだよ」
「モテる要素だらけじゃん」
「でもなんでわざわざ？東京からでしょ？そっちの方が大きい病院とか有名な病院とかあるんじゃね？」
「なんか訳ありなのかもよ？」
「うわぁーなんか楽しみ」
「いつからだっけ？」
「来週からだって…」

新しい先生が来るのか……〝脳外科医〟〝30代〟……

亘くん元気にしてるのかな？
そういえば…亘くんのお母さんは元気になったのかな？亘くん自身の問題も解決したのかな？

もう美華さんとは結婚したんだろうか…あれから2年もたったんだもん。きっと結婚したんだろうな…もしかしたら子供もいるかもしれない…そうすると望夢に兄弟がいるのかも？それは困る。望夢のことは絶対に知られてはいけない…

ダメダメ…余計な事は考えない。望夢との未来が私にはあるんだから。亘くんとはもう会えない。もしかしたら勝手に望夢を産んだのを知ったら怒られるかもしれない。ましてや美華さんとの間に子供がいるのなら…

望夢は私の子供。私だけの…たった1人の家族だから、絶対に今の生活を守らないと。大丈夫。大丈夫。そう新たに決意をした。