神さま…幸せになりたい…

柊 奏音

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赤ちゃん

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「まんまっー」
「はいはい。望夢ちょっと待ってて」
「詩織ちゃん。私がするよ」
「あやちゃん、お願いします。」

あれから2年がたって私は1歳の男の子のママになった。


札幌の地で数ヶ月がたった頃、そういえば生理が来てない事に気がついた。最初は新しい土地でのストレスかと思っていた矢先、勤務中に倒れてしまい診察をした結果、妊娠がわかった。

いつも避妊を忘れなかった亘くんなのに不思議だったが亘くんとの未来をなくしてしまった私に亘くんとの子供が授かった。私にも家族ができる。嬉しかった。神さまは意地悪じゃなかったんだ…でも現実問題、1人で産み育てるのは覚悟が必要だったが、亘くんに報告はできない。仕事も辞めて、家族が残してくれた遺産でこれからの生活をしていかないといけない。これからのことに不安で悩んでいると病室に桜庭看護部長がやってきた。
「川原さん、お腹の子のお父さんには報告するの?」
「いえっ…何も言わずに出てきてしまったので…仕事は辞めます。どこか違う土地で…」
「なら。ここにいなさい。行く場所がないのなら」
思いがけない言葉にびっくりしていると

「私もシングルなの。だからあなたの大変さも苦しさもわかるつもりよ。頼っていいのよ。それにここの病院は保育園も完備してるから大丈夫。ただね、今いる寮はシングル専用だから…もしよかったら私と一緒に住まない?娘がいるんだけど娘は助産師だから何かあっても助けてあげられると思うわ」

桜庭部長からの暖かい言葉に泣いてしまった。部長は私が落ち着くまで、ずっと背中を撫でて大丈夫よ。心配しなくていいからね。と言ってくれた。その優しい温かさに安心した。神さま、私もやっと幸せになるための一歩を踏み出せた気がします。神さまなんていないと言ったけど…ごめんなさい。やっぱり神さまは見ていてくれてるんですね。

桜庭部長の家で居候をさせてもらう事になった。初めは緊張しっぱなしだったが、だんだんと親子のように話もできるようになっていった。さすがに家で役職で呼ばれるのは…と下の名前の沙代子さんと呼ばせてもらうようになった。娘さんの絢さんは私の7つ上のお姉さんだ。「詩織ちゃんの子供は私が取り上げるからね」と言ってくれた。

難産で40時間もかかったけど、沙代子さんや絢ちゃんが励まして支えてくれて無事に男の子を出産した。切れ長の目に薄い唇。亘くんによく似てる。

「詩織ちゃん、赤ちゃんイケメンさんになりそうね。名前決まった?」
「はい。のぞむゆめと書いて望夢のぞむです。夢や希望を持って未来ある人生を送って欲しくて」
「素敵な名前ね。みんなで一緒に育てようね」
「ありがとうございます。あやちゃん」

望夢との新しい未来が希望に満ち溢れた日になることを切に望んだ。

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