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医院長の娘の美華さんが留学先から帰ってきて、亘先生に結婚を迫ってるという噂があった矢先、彼女から突然カフェに誘われた。嫌な思いがしたが仕方なく待ち合わせの場所に向かった。
「初めましてよね?私、小鳥遊 美華です。あなたのお姉さんには新人の頃にお世話になったわ」
「初めまして川原 詩織です。姉と関わりがあったんですね。知らなくてすみません」
美華さんは頼んだコーヒーを一口飲んで口角を上げた。
「単刀直入に言うわね。亘先生と別れてほしいの」
「…えっ?」
「知ってるわ。亘先生とお付き合いしてるって…でもあなたより私の方がお似合いだと思わない?だってそうでしょ?私と結婚したら相応のポジションを与えられる。将来だって医院長になれるのよ。亘先生の実力なら当然だけどね」
「………」
「亘先生が本気であなたを好きだと思ってるの?両親もお姉さんも亡くした可哀想なあなただからじゃない?子供の頃から知ってる子だから…あなたと付き合ってるのは同情よ同情、愛情なんかじゃないわ。わからないなんて本当、可哀想な子ね」
私を哀れんで見てくる美華さんの目は冷たく、心に突き刺さった。でも私は亘くんに愛されている確証があったから心を強く持って美華さんに言い返した。
「亘くんは同情なんかで付き合ってくれているわけではありません。お互いに大切だから、お互いが必要だから…私と亘くんは本当に愛し合ってるんです」
「…っなんなの?私に意見を言うつもり?いいわよ。別れなかったらどうなるか…私は亘さんと結婚がしたいの。どんな手段を使っても別れてもらうから覚悟しておきなさいよ」
そう捲し立てて美華さんは大股でカフェを後にした…彼女が出て行ってくれてホッとした。これから先起こることなんてわからない…でも亘くんを信じてる。亘くんだけを愛してる。
でも私はこの時のことを亘くんに言えずにいた…できることなら言いたくなかった。
美華さんから呼び出された1週間後、亘くんからしばらく実家に帰るからと言われた。理由を聞くと実家に泥棒が入ったようで先生の荷物もあるから無くなった物がないかの確認らしい。しかも不思議な事にセキュリティもかかってる家には入ることができないのに入れたのは家政婦のせいじゃないかと言われ長い間信頼していた人に裏切られたショックでお母さんは寝込んでしまったので、その様子も兼ねてだ。しばらく会えないのは淋しいけど仕方がないと思った。病院で会えるのを期待していたが元々、診療科が違うしシフトもバラバラなので会えない日々が続いていた…
そんなある夜勤明けの朝、亘くんのマンションに帰ると美華さんがマンションの前に立っていた…
「おはようございます」お辞儀をして立ち去ろうとしたら
「亘先生、大変みたいね。誰のせいかしら?」
思わず美華さんの方に振り向くと私を睨んでいる目と合った。
「全部あなたのせいよ。あなたがいつまでも別れないから、このままだと亘先生自身にも被害が起こるわよ?私はどんな手段を使っても彼を手に入れるわ。先生が傷ついてもいいの?大切なら大切にしたいなら身を引くことを考えた方がいいんじゃない?」
「私は…亘くんと別れたくはありません…亘くんに被害って…どういうことですか?」
「言ったわよね?どんな事でもするって…先生が先生でいられなくなくかもしれないのよ?」
「それって…」
「頭のいい子ならわかるはずよ。よく考えて…そうね。1週間の猶予をあげるわ。その間にこの病院から、亘先生の前からいなくなってくれたら先生は今まで通り全て解決してあげるわ」
「っそんな…」
私は逃げるようにマンションに入った。
亘くんが先生じゃなくなる…その言葉に違和感を感じながらも、亘くんに相談もできずにいた。そんな中、亘先生がこの病院を辞めるんじゃないかと言う噂話が流れてきた。亘先生が患者さんからお金を受け取って手術をした事があるらしいと…大体の人はそんなの嘘だと思っている。でも病院の内規において患者さんと医師間に金銭の授受を禁止しているこの病院ではあってはならない行為だ。もし仮にあったとしたら減給や懲戒解雇等、処分の対象となる可能性がある…もしかしたら?前に美華さんが言っていたことはこれかもしれない…本当に処罰されてしまうかもしれない…私のせいで?そうなったら…このまま医師として仕事ができるのか…その夜、久しぶりに亘くんから電話がかかってきた。
〝詩織、元気にしてる?何か変わったことはない?〟
〝亘くん。大丈夫よ。それよりお母さん大丈夫?〟
〝あぁ…まだ落ち着かないけど…精神的に相当参ってるみたいだよ。それより詩織。病院の噂は知ってる?俺は本当に何もやってないから信じてほしい〟
〝信じてるよ。大丈夫。体気をつけてね〟
〝詩織ありがとう。愛してるよ〟
〝亘くん私も愛してる〟
私は怖かった。美華さんのエスカレートする行動に…目的はわかってる。
でも…亘くんと別れたくない。みんないなくなった時ずっと側にいてくれると言ってくれた…亘くんまで居なくなったら…神さま、私が幸せになる方法があるのなら教えてください。
「初めましてよね?私、小鳥遊 美華です。あなたのお姉さんには新人の頃にお世話になったわ」
「初めまして川原 詩織です。姉と関わりがあったんですね。知らなくてすみません」
美華さんは頼んだコーヒーを一口飲んで口角を上げた。
「単刀直入に言うわね。亘先生と別れてほしいの」
「…えっ?」
「知ってるわ。亘先生とお付き合いしてるって…でもあなたより私の方がお似合いだと思わない?だってそうでしょ?私と結婚したら相応のポジションを与えられる。将来だって医院長になれるのよ。亘先生の実力なら当然だけどね」
「………」
「亘先生が本気であなたを好きだと思ってるの?両親もお姉さんも亡くした可哀想なあなただからじゃない?子供の頃から知ってる子だから…あなたと付き合ってるのは同情よ同情、愛情なんかじゃないわ。わからないなんて本当、可哀想な子ね」
私を哀れんで見てくる美華さんの目は冷たく、心に突き刺さった。でも私は亘くんに愛されている確証があったから心を強く持って美華さんに言い返した。
「亘くんは同情なんかで付き合ってくれているわけではありません。お互いに大切だから、お互いが必要だから…私と亘くんは本当に愛し合ってるんです」
「…っなんなの?私に意見を言うつもり?いいわよ。別れなかったらどうなるか…私は亘さんと結婚がしたいの。どんな手段を使っても別れてもらうから覚悟しておきなさいよ」
そう捲し立てて美華さんは大股でカフェを後にした…彼女が出て行ってくれてホッとした。これから先起こることなんてわからない…でも亘くんを信じてる。亘くんだけを愛してる。
でも私はこの時のことを亘くんに言えずにいた…できることなら言いたくなかった。
美華さんから呼び出された1週間後、亘くんからしばらく実家に帰るからと言われた。理由を聞くと実家に泥棒が入ったようで先生の荷物もあるから無くなった物がないかの確認らしい。しかも不思議な事にセキュリティもかかってる家には入ることができないのに入れたのは家政婦のせいじゃないかと言われ長い間信頼していた人に裏切られたショックでお母さんは寝込んでしまったので、その様子も兼ねてだ。しばらく会えないのは淋しいけど仕方がないと思った。病院で会えるのを期待していたが元々、診療科が違うしシフトもバラバラなので会えない日々が続いていた…
そんなある夜勤明けの朝、亘くんのマンションに帰ると美華さんがマンションの前に立っていた…
「おはようございます」お辞儀をして立ち去ろうとしたら
「亘先生、大変みたいね。誰のせいかしら?」
思わず美華さんの方に振り向くと私を睨んでいる目と合った。
「全部あなたのせいよ。あなたがいつまでも別れないから、このままだと亘先生自身にも被害が起こるわよ?私はどんな手段を使っても彼を手に入れるわ。先生が傷ついてもいいの?大切なら大切にしたいなら身を引くことを考えた方がいいんじゃない?」
「私は…亘くんと別れたくはありません…亘くんに被害って…どういうことですか?」
「言ったわよね?どんな事でもするって…先生が先生でいられなくなくかもしれないのよ?」
「それって…」
「頭のいい子ならわかるはずよ。よく考えて…そうね。1週間の猶予をあげるわ。その間にこの病院から、亘先生の前からいなくなってくれたら先生は今まで通り全て解決してあげるわ」
「っそんな…」
私は逃げるようにマンションに入った。
亘くんが先生じゃなくなる…その言葉に違和感を感じながらも、亘くんに相談もできずにいた。そんな中、亘先生がこの病院を辞めるんじゃないかと言う噂話が流れてきた。亘先生が患者さんからお金を受け取って手術をした事があるらしいと…大体の人はそんなの嘘だと思っている。でも病院の内規において患者さんと医師間に金銭の授受を禁止しているこの病院ではあってはならない行為だ。もし仮にあったとしたら減給や懲戒解雇等、処分の対象となる可能性がある…もしかしたら?前に美華さんが言っていたことはこれかもしれない…本当に処罰されてしまうかもしれない…私のせいで?そうなったら…このまま医師として仕事ができるのか…その夜、久しぶりに亘くんから電話がかかってきた。
〝詩織、元気にしてる?何か変わったことはない?〟
〝亘くん。大丈夫よ。それよりお母さん大丈夫?〟
〝あぁ…まだ落ち着かないけど…精神的に相当参ってるみたいだよ。それより詩織。病院の噂は知ってる?俺は本当に何もやってないから信じてほしい〟
〝信じてるよ。大丈夫。体気をつけてね〟
〝詩織ありがとう。愛してるよ〟
〝亘くん私も愛してる〟
私は怖かった。美華さんのエスカレートする行動に…目的はわかってる。
でも…亘くんと別れたくない。みんないなくなった時ずっと側にいてくれると言ってくれた…亘くんまで居なくなったら…神さま、私が幸せになる方法があるのなら教えてください。
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