10 / 42
嘘つき
しおりを挟む
結局、亘くんは来なかった…眠ろうとしたけど眠れなくて亘くんを待ってしまった…
「おはようございます。具合はどうですか?本日担当します河合です。よろしくお願いします」
「…は…い」
「後ほどまたきますね」
「……」
この声、この前廊下で話してた人の声に似てる。この人も私の事嫌いなんだっけ…ぼーっとしてるうちにご飯が運ばれてきた。食欲は…ない。食べたくない。
トントントン
「詩織おはよう。昨日はごめんな。急にオペが入ってかなり長引いちゃって…終わってからも患者さんの対応してて…顔見に来たかったのに、来るのが遅くなっちゃったな。詩織をオペした橘は優秀だからよかったよ。午後にCT取って大丈夫ならチューブ取れるから、ちゃんと飯は食べろよ。詩織…どうした?」
「………」
「あっごめん。疲れてるのに俺、話しすぎたか?ゆっくりしてていいから。何か必要なものとかあるか?」
「…亘くん、忙しいから来なくていいよ。好きなことすればいいから…」
「はぁ?何言ってんの?」
「眠いからまだ寝てていい?」
「詩織…?」
私は布団を頭から被った。亘くんの顔を見たくなかった…亘くんは何も言わずに部屋を出ていった。
どうして嘘つくの?本当のこと言えないの?なんで?どうして?亘くんに好きって言われて嬉しかったのに…一緒にいてくれるって安心したのに…やっぱり亘くんの好きは妹としての好きなのかもしれない。これからは一緒に住めないかもしれない。心の中は複雑で…涙が後から後から溢れてきた…
「川原さん、ご飯食べられましたか?って全然食べてないじゃない。気に入らなかったんですか?」
「いえっ…食欲なくて…すみません」
「あのねー食べないと退院できないでしょ?また亘先生に心配させたいの?今日だって、あなたの事が心配だからって朝早く来たんですよ。本当は…まぁいいわ。お昼はちゃんと食べてくださいね。お腹空いたからって売店で何か食べることはしないでください」
食欲は全くなかったから、そんなことしないのに…なんでそんな嫌味なこと言われないといけないの?不安定な気持ちのまま過ごした。
お昼になり食欲はなかったが、また言われるのが嫌で無理やり食べた。そのせいか吐いてしまった。でも知られたくなかった…
「あのね川原さん食べれるなら最初からちゃんと食べてくださいね。あなたも看護師ならわかるでしょ?それとも構ってちゃんなの?」
「…っすみませんでした」
「わかったならもういいわ」
昼過ぎに橘先生がCTを撮った画像を確認してくれてチューブを取ってくれた。取ったばかりだからなるべく安静にしてと言われたが…なんだか落ち着かなくて廊下を歩いていたら亘くんの話声がして耳を澄ました。
「だから…これ以上は無理なんだって」
「お願い。もう一度でいいから」
「俺だって暇じゃない。昨日だってオペが終わったら詩織の所に行くはずだったのに」
「詩織さんには私から謝るわ」
「そんな事したらややこしくなるじゃないか…」
「だって好きなの。凄いよかったの。最後にするから…もう一度だけお願い…」
「わかった。最後だぞ」
「ありがとう。本当に嬉しい」
あぁ…そうか泉先生は亘くんの事が好きなんだ。看護師さん達も言っていたお似合いだって。もう一度…きっと2人で…もしかしたら身体の関係?
「ねぇ…川原さん…今の話聞いてた?泉先生と付き合ってると思ったけど…もう一度だけって…身体の関係もあったのかしら?亘先生だって最後って…」
私は河合さんの言葉を最後まで聞くことなく走った。走って、走って…どこに行けばいいのかわからなかった。
「はぁ…はぁ…はぁ」
息が上がり疲れた所で足を止めた。
「ここ…」
そこは病院の裏にある公園だった。走りすぎて足がガクガクして息も上がっていてベンチに座った。
亘くんが朝言ってたことは嘘だったんだ…オペが長引いたのも、患者さんの対応も、私の顔見たかったのも…全部、全部、嘘で、本当は泉先生と一緒にいたんじゃん。なんで嘘言うの?どうして本当の事、言ってくれないの?どうして?どうしてなの?
もう…疲れちゃったよ。お父さん、お母さん、お姉ちゃん、お願いだから迎えに来て…私もみんなと一緒にいたいの。
神さまお願いです。私をみんなの所に連れてって…ください…
「おはようございます。具合はどうですか?本日担当します河合です。よろしくお願いします」
「…は…い」
「後ほどまたきますね」
「……」
この声、この前廊下で話してた人の声に似てる。この人も私の事嫌いなんだっけ…ぼーっとしてるうちにご飯が運ばれてきた。食欲は…ない。食べたくない。
トントントン
「詩織おはよう。昨日はごめんな。急にオペが入ってかなり長引いちゃって…終わってからも患者さんの対応してて…顔見に来たかったのに、来るのが遅くなっちゃったな。詩織をオペした橘は優秀だからよかったよ。午後にCT取って大丈夫ならチューブ取れるから、ちゃんと飯は食べろよ。詩織…どうした?」
「………」
「あっごめん。疲れてるのに俺、話しすぎたか?ゆっくりしてていいから。何か必要なものとかあるか?」
「…亘くん、忙しいから来なくていいよ。好きなことすればいいから…」
「はぁ?何言ってんの?」
「眠いからまだ寝てていい?」
「詩織…?」
私は布団を頭から被った。亘くんの顔を見たくなかった…亘くんは何も言わずに部屋を出ていった。
どうして嘘つくの?本当のこと言えないの?なんで?どうして?亘くんに好きって言われて嬉しかったのに…一緒にいてくれるって安心したのに…やっぱり亘くんの好きは妹としての好きなのかもしれない。これからは一緒に住めないかもしれない。心の中は複雑で…涙が後から後から溢れてきた…
「川原さん、ご飯食べられましたか?って全然食べてないじゃない。気に入らなかったんですか?」
「いえっ…食欲なくて…すみません」
「あのねー食べないと退院できないでしょ?また亘先生に心配させたいの?今日だって、あなたの事が心配だからって朝早く来たんですよ。本当は…まぁいいわ。お昼はちゃんと食べてくださいね。お腹空いたからって売店で何か食べることはしないでください」
食欲は全くなかったから、そんなことしないのに…なんでそんな嫌味なこと言われないといけないの?不安定な気持ちのまま過ごした。
お昼になり食欲はなかったが、また言われるのが嫌で無理やり食べた。そのせいか吐いてしまった。でも知られたくなかった…
「あのね川原さん食べれるなら最初からちゃんと食べてくださいね。あなたも看護師ならわかるでしょ?それとも構ってちゃんなの?」
「…っすみませんでした」
「わかったならもういいわ」
昼過ぎに橘先生がCTを撮った画像を確認してくれてチューブを取ってくれた。取ったばかりだからなるべく安静にしてと言われたが…なんだか落ち着かなくて廊下を歩いていたら亘くんの話声がして耳を澄ました。
「だから…これ以上は無理なんだって」
「お願い。もう一度でいいから」
「俺だって暇じゃない。昨日だってオペが終わったら詩織の所に行くはずだったのに」
「詩織さんには私から謝るわ」
「そんな事したらややこしくなるじゃないか…」
「だって好きなの。凄いよかったの。最後にするから…もう一度だけお願い…」
「わかった。最後だぞ」
「ありがとう。本当に嬉しい」
あぁ…そうか泉先生は亘くんの事が好きなんだ。看護師さん達も言っていたお似合いだって。もう一度…きっと2人で…もしかしたら身体の関係?
「ねぇ…川原さん…今の話聞いてた?泉先生と付き合ってると思ったけど…もう一度だけって…身体の関係もあったのかしら?亘先生だって最後って…」
私は河合さんの言葉を最後まで聞くことなく走った。走って、走って…どこに行けばいいのかわからなかった。
「はぁ…はぁ…はぁ」
息が上がり疲れた所で足を止めた。
「ここ…」
そこは病院の裏にある公園だった。走りすぎて足がガクガクして息も上がっていてベンチに座った。
亘くんが朝言ってたことは嘘だったんだ…オペが長引いたのも、患者さんの対応も、私の顔見たかったのも…全部、全部、嘘で、本当は泉先生と一緒にいたんじゃん。なんで嘘言うの?どうして本当の事、言ってくれないの?どうして?どうしてなの?
もう…疲れちゃったよ。お父さん、お母さん、お姉ちゃん、お願いだから迎えに来て…私もみんなと一緒にいたいの。
神さまお願いです。私をみんなの所に連れてって…ください…
26
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説


私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

領地経営で忙しい私に、第三王子が自由すぎる理由を教えてください
ねむたん
恋愛
領地経営に奔走する伯爵令嬢エリナ。毎日忙しく過ごす彼女の元に、突然ふらりと現れたのは、自由気ままな第三王子アレクシス。どうやら領地に興味を持ったらしいけれど、それを口実に毎日のように居座る彼に、エリナは振り回されっぱなし!
領地を守りたい令嬢と、なんとなく興味本位で動く王子。全く噛み合わない二人のやりとりは、笑いあり、すれ違いあり、ちょっぴりときめきも──?
くすっと気軽に読める貴族ラブコメディ!

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる