魔王の溺愛

あおい 千隼

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三十三話

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「バルバトス様、僕……怖い」

「恐れることはない。これでおまえの心と身体すべて俺のものだ。愛しき伴侶、永久の愛をおまえに──」

「あっ、ああっ、バルバトス、様───」

 ふたりの体躯は隙間なく重なり合うと、終わりのない夜の帳に溶けていった──────



「具合はどうだ」

「……バルバトス様。はい、平気です」

「そうか」

 初めてのまぐあいに意識を手放してしまったジュリオ。バルバトスの胸にすっぽりと包まれた状態で目を覚ます。

「その、途中で意識がなくなって……ごめんなさい」

「くっくっ、おまえはよく謝るやつだな。なにも悪くはない、それにそのうち慣れるだろうしな」

「えっ、それはどういう意味──」

「これから毎日のように抱いてやれば、嫌でも耐性ができるだろう。だが今はジュリオの初心な様子を味わわせてくれ」

 最後にバルバトスが話した内容に、ジュリオは目を見開き狼狽うろたえる。あんなことが毎日つづけば、きっと身体が壊れてしまう。そんなジュリオの不安はいつの日か解消され、バルバトスの愛を全身で受け止めるのだった。

 魔界にいる限りジュリオは歳を取らない。過ぎることのない時間を永久にバルバトスと生きるのだ。時には彼に抱きかかえられ人間界に降り立つと、ジュリオは母親の許を訪ねる。

 抱えきれないほどの土産を持って──────


 了
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感想 1

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みんなの感想(1件)

たろじろさぶ

ちゃんと里帰りできているのですね😄
ほっとしました。
どうぞお幸せに💖

あおい 千隼
2024.06.25 あおい 千隼

嬉しい感想ありがとうごさいます♡
ジュリオとバルバトス、仲睦まじいふたりの笑顔を見ることができてお母様も安心ですね。
最後までお読みくださいましてありがとうございました(*ˊ ˋ*)
あおい 千隼

解除

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