魔王の溺愛

あおい 千隼

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二十八話

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 いつも見守っていたと話すバルバトスのことだ、きっと今もどこかでジュリオを見守っているかもしれない。夜の道を走る自分に気づいて欲しいと願いながら、ジュリオは思い出の場所に向かっている。

 毎日のように通る道の途中にある森、静かな湖の畔を目指してジュリオは急ぐ。

「バルバトス様、僕ジュリオです。どうかすがたを見せて」

 過去にバルバトスが横たわっていた木のまえで、ジュリオは何度も彼の名を呼び願いを乞う。すると程なくして風が舞い木々がざわめくと、目のまえを黒い翼を広げるバルバトスが下りたつ。

「なぜ来た。どうして俺の名を呼ぶ」

 つづけて「帰れ」と言おうとして、けれどそれを呑み込む。言葉よりも先にジュリオは身体が動き、胸に飛び込んてきたからだ。ぎゅうとしがみつかれては、もう断わりの文句など口にできなかった。

「僕やっぱりあなたのことが忘れられない。好きですバルバトス様、僕をあなたの伴侶にして下さい」

「もう二度と手放してやれんぞ」

「はい」
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