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十四話
しおりを挟む話の論点がずれていると思うのは僕だけなのか。
この男とは絶対に意思の疎通ができないと、心のなかでジュリオはため息をつくのだった。その間にも男の手は休まらない。今度はジュリオの髪をかきあげると、耳をあらわにして口唇を這わせる。
「んっ、あん……っ」
耳朶を這う男の舌が得も言われぬ感覚を生み、ぞくぞくと肌が粟立ってしまう。鼻に抜けるような甘い声がジュリオの口から漏れ、思わず両手で覆い隠す。けれど男がそれを阻む。
「隠すな、もっと聞かせろ。おまえは声も愛らしい」
「んん、や、あ……──ああっ!」
尚も舌を這わされ得体の知れない感覚に悶えていたが、つぎの瞬間ちくりとした痛みが耳垂に走り身体が跳ねる。つつと流れるひと筋の血潮を舌で舐めとると、男は満足げに「これでおまえは俺のものだ」とささやく。
耳に手を伸ばし触れてみると、そこには冷たいものが刺さっている。もしやこれはピアス──
「あの、これ……」
「ルビーのピアスだ。俺の血より生まれた石だ、それを耳につけたおまえは俺のものだという証になる。この宮殿にいる限り、不逞な輩がおまえを狙うだろうが、それがおまえを守ってくれる」
最後に「この部屋から出なければ問題ない」と意味深長な言葉を残し、男はジュリオをテーブルにエスコートして食事を始めた。
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