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七話
しおりを挟む今日一日でどれだけ謝っただろう。またジュリオは小さく「ごめんなさい」とつぶやくと、ふたたび青い瞳に涙を浮かべるのだった。
どれくらいそうしていたのか、しばらくすると遠くから扉の開く音が耳に届き、はっとジュリオは顔をあげる。
僕を助けてくれたひとかもしれない。それで様子を見にきてくれたのではと、後悔の念を拭うとジュリオは居住まいを正す。けれどそこで、ふたたび裸体であることを思い出し、羞恥でその場に頽れてしまう。
「目が覚めたようだな。どうだ、腹は空かないか」
褥に顔を伏せるジュリオに、深い闇のような落ち着いた声音が問う。
おもてをあげるのは恥ずかしいが、けれど命の恩人に対しいつまでも返事をしないのは失礼だ。母親から最低限のマナーを教わったジュリオは、感謝の言葉は相手の目を見て話すものと学ぶ。
薔薇色の頬をさらに赤く染めながら、声の主に視線を向けて感謝を伝える。
「ああ、あの……危ないところを助けていただいて、ありがとうございました。それで、その、僕いま……ははは裸で……──」
みる見る身体が赤く染まってゆく。言葉をつまらせながらも、自身が裸体であることを訴えようとするジュリオ。けれどもつづく言葉が出てこない。それはなぜかというと、ようやく視界に定まった人物があまりにも美しかったからだ。
意志の強そうな眉と、鳩の血のように紅いルビーの瞳。貴族的な鼻梁は男らしく、肉感的な口唇は口角が上がり色気がただよう。削げた頬とながく尖った耳が印象的で、ひたいで光る大粒のルビーに目が奪われる。
精悍なおもてにかかるながい髪は、烏の濡れ羽色をした見事なものだ。逞しい長躯を包む瑠璃色をした着衣は、それがジュリオのような貧しい生まれであっても上質なものと分かる。
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