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二話
しおりを挟むジュリオの暮らすブロックはいわゆる貧民街で、富裕層の長である貴族の馬車が道を走るなどなかった。それがどうして我が物顔で通行するようになったかというと、ひとえに貴族街を馬車が行き来するのは景観を損ねるからだ。
それだけではない。紳士が道の端を歩き、婦人が犬の散歩のため背後の馬車に気を遣うことがあってはならない、そんな理不尽な事案は多くの貴族に支持を得た。布令が出されると、馬車の通行は貴族街から貧民街に移ったというわけだ。
「隣町の子だね、ほんとう酷い話。でも心配しないで、僕ちゃんと気をつけるから」
「そうね、ジュリオも今日で十六歳だものね。わかったわ」
外へとつづく扉のまえに立ち、今にも駆けだしていきそうな我が子を引きよせ抱きしめる母親は、「おめでとうジュリオ、これで大人の仲間入りね。楽しんでらっしゃい」と愛おしそうにジュリオの頭を撫でるのだった。
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