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第三章 指切
第五十五話
しおりを挟むきっぱりと否定をする純平の顔をしばらく睨んでいた一大。その表情に偽りがないことを感じ取ると、一大は「そうか。すまなかった」と頭を下げた。
一大に会釈をすると、純平は遥希に「じゃあ俺これで」と軽く手をあげ場を立ち去った。純平がいなくなったことで気まずさに襲われる遥希、一大の視線に耐えられなくて後ずさり顔を背ける。
遥希が逃げ出すと思ったのか、駆けより一大は遥希の腕を掴む。そして話しだす。
「さっきは悪かった。勘違いして、俺……きついこと言ってごめん。さっきの男、遥希の新しい男かと思って、頭に血がまわってあんな真似を──そういやあいつ、龍哉はどうした」
こわばった顔が少しずつ軟化してくると、遥希を見つめる一大の表情は柔い笑みさえ浮かぶようになり、謝罪につづき龍哉のすがたがないことを問う。すると遥希。
「……なせ」
「うん?」
「離せっ!」
掴まれた一大の手を払いのけると怒りに任せ遥希が叫ぶ。距離を取り一大を睨む遥希は憎しみと悲しさと切なさにわななき、どうしていいか分からず混乱する。
一瞬怯んだものの、それでも尚にじりよる一大。今度は遥希を抱きしめると、潰れてしまいそうな胸から想いを取り出し伝える。
「遥希──愛してる」
目を見開く遥希。どれだけ拒もうと蔑もうと己を求めてくる一大に、遥希はもう自分の気持ちを隠し抑え込むことができなくなってしまう。
もうダメだ、嘘はつけない──俺も愛してる。一大───
誰もを傷つけ、すべてを捨てる決心をした遥希、それは一大も同じ想いだった。
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