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第三章 指切
第四十一話
しおりを挟む「相楽君ひさしぶり。私のこと憶えてる?」
「高校のときからそうだったけど、遥希くんってほんとうに綺麗」
「うん、すっごくイケメンだよね。ねえアドレス交換しようよ」
我こそはと遥希の御眼鏡にかなおうと主張する女性たち、びりびりと暗黙下で牽制の火花が飛び交う。蚊帳の外となった他の男たちは居心地が悪そうに、そそくさと受けつけに逃げていく。
「おまえ、相変わらずモテるな」
後ろを歩く女性陣に聞こえないよう、太田がそっと遥希に耳打つ。それには愛想笑いを浮かべるだけにとどめておく。
誰が遥希のとなりの席を手に入れるかで女性たちが揉めるなか、遥希と太田は受けつけで名前を記入し祝儀を渡して会場に入る。
あらかじめ席は決まっているのだ、席の奪い合いなど無意味なことをとふたりは苦笑する。新郎友人客のテーブルにやってくると、遥希のとなりは太田と席次表が配置されていた。
かしましい女性陣は残念ながら高校時の同級生だ、同じテーブルにつき今も遥希に熱い視線を送っている。
ちなみに遥希がホストだということは高校の同級たちには知らせていない。これを知っているのは大学からのつき合い数名と、今日の主役である一大だけだ。
ふだんであれば女性のあしらいなど訳はないが、できればホストであることは知られたくはない。噂が広まれば遥希を目当てに訪れる女性が増え、店の利益にはつながるだろう。
だが同級生こその問題もある。遥希の一番になりたいという思いは買ってだが、友人だからと特別待遇を求め結果として他の客に迷惑をかけてしまうことになりかねない。
現に一度そう言った騒動があった。
遥希がホストだということをどこかで知った女性が入店、接客中の遥希を「はやく呼べ」と言って我が物顔。結果として極太客の機嫌を損ねてしまい、店の名誉を回復させるためにも遥希はポケットマネーを散財する羽目に。
結局その女性はホストという甘いまやかしにハマり、他店の男に入れ込み借金を抱えることに。風呂屋に流れて今でも借金を返してはホストに貢ぐという生活を送っているという。
以来むやみに友人知人に自分の職業を公にはせず、ホストであることを知っている者には根回しをしている。華やかな業界では動く金も大きい、その分プライベートは切り離さねばならないのだ。
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