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第三章 指切
第五話
しおりを挟む遥希は代表の営業スタイルを唯一受け継いだホストとして、店内ホストたちの尊敬対象となっている。それはナンバーワンすら敵わずに、鮮やかな接客は手本ともされるほど。
ホストが人気になる秘訣は多々あるが、基本はトークが面白くそれでいて聞き上手なこと、また女心を理解しなければホストとしてやってはいけない。
客の感性を把握することも大切で、歩調を合わせるように趣味を共感しノリよく話を合せてやるのだ。それから全身に気を遣うことも重要で、清潔感があり男らしい振る舞いも好印象を与える。
だが一番の理想は空気を読めること。これを極めておけば最低限はクリアだ。
営業スタイルはいくつかの法則があり、遥希は正攻法なスタイルで人気を博す。
まずは友営や友業と略される友達営業。飲み友感覚で客を楽しませ、時には相談に乗ってやったりと友達のように接するスタイルだ。
つぎに色営。これは色恋営業の略で、甘い言葉や態度で接するスタイルのこと。恋人のように接客することで、客の心を巧みに捕らえ惚れさせる。また色営は枕営業も含まれ、標的とする客は色カノと呼ばれる。
それからオラ営というのもある。オラオラ営業の略で、ホストクラブ特有の営業方法であり女性には人気のスタイルだ。
客に対して強気でガンガン煽ったり偉そうにすることで、恍惚となった客は翻弄され言われるままボトルを入れてしまう。だがオラ男に嫌悪を抱く客もいるので、そこは見極めが重要なところ。
最後に本営。本カノと略される本命彼女営業のことで、このスタイルが代表と遥希が売りにする強みの営業だ。
客に「きみは僕の彼女だよ」「僕が好きなのはきみだけ」と愛をささやき、疑似恋愛ではあるが女性につかの間の恋人として接するのだ。
もちろん営業なので彼女ではないが、本命だと思わせる為にデートをすることはある。これは同伴やアフターと呼ばれ、けれど肉体関係に持ち込まないのが本営と色営の違いだ。
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