142 / 220
第二章 耽溺
第六十一話
しおりを挟む音稀の姉、香奈と親友の関係にある俺の元嫁。俺と元嫁の結婚披露宴に出席した香奈は、スマホで俺らの晴れ姿を撮りまくっていた。そのときのことは俺も覚えている。
けど香奈が撮っていた多くは元嫁とのツーショットではなく、ほとんどが俺オンリーのソロ画像だったそうだ。それを姉から見せてもらった音稀、ひと目見て俺に惚れたんだと。クソ可愛いぜ。
それ以降の音稀はテンプレな行動や発言で自爆、俺に好意があると丸分かりな態度で香奈に気づかれてしまった。すでに彼氏を奪略された後だ、もう二度と自分が気に入ったやつは姉に知られてたまるかと誓っていたのに早くもKO負け。
けどそのときは淡い恋心を勝手に抱いているだけってだけで、どうこうするつもりはないと伝えたそうだ。現に俺は結婚をして他人の夫だ、音稀は香奈のようにひとのモノを欲しがるお古好きじゃねえ。
だが香奈の悪い虫──奪略心──の矛先だけは逸らしておく必要があった。昔から何かと弟に張り合ってくるクソ魔女、姉よりも格段に可愛い弟に嫉妬した浅ましい女のジェラ心は半端ねえ。
親から買ってもらったものは玩具や服、果ては消しゴムひとつでも取り上げちまうババ色根性。だから恋人を奪うことも自然の流れだったと音稀はいう。……淡々と話す内容じゃねえよ、俺の胸がズキズキ痛いじゃねえか。
彼氏を取られたと分かったときは、どん底まで叩き落された気分だったそうだ。実の姉からの背後射撃、さぞ打ちのめされただろう。けど音稀はその底から這い上がった。
ブランクはできちまったが、それでも笑顔を取り戻しまた大学に通うようになった。そしてようやく修復されてきた心に芽生えた恋心(相手は俺な)、落ちた瞬間に敗れ砕けたがそれでもよかった。
ただ、またひとを好きになれた──それだけで音稀は心が温かくなったそうだ。過去の痛みが緩和されただけで、俺を好きになった甲斐があったと話しながら笑う。
でも香奈は奪略女だ、たとえ親友の夫であろうと弟のモノは奪わないと気が済まない鬼畜。ふたたび好きなひとを奪われてしまったら、もう二度と立ち直ることができなくなってしまう。
だから必死に俺に対する恋心を隠し、未だにストーカー野郎に未練があるように振る舞った。その結果は語らずとも判るほど、香奈の性嗜好はダブスタだったというわけだ。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる