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第二章 耽溺
第五十二話
しおりを挟む音稀に名を呼ばれて飛び上がる。何か喋れつって祈ってたのはどこのどいつだ情けねえ。
ぴたりと止まりふり返る音稀。ガクブルしながら返事する俺。音稀が話す。
「スマホ持ってる?」
「スマホ? あ、ああ、持ってるぜ」
音稀を追いかける際にハーフパンツのポケットにつっ込んだスマホを取り出し、「どこかにかけるのか」と問いながら音稀に差しだす。
くすりと笑う音稀。見れば音稀も手にスマホを手にしていて、「違うよ。今から森の道を歩くから懐中電灯代わりにね」と俺に説明しながらライト機能をオン。
なるほど森ンなかじゃ明かりがないと暗くて進めねえ──って、ちょっと待て。森に入ってくのかよ。本格的にビビリながら望み薄な提案をしてみる。
「いや、あのさ。もう遅いし暗いし、明日にしねえ?」
「ううん、明日にはしないよ」
「……ですよね」
笑顔で即答する音稀。分かっちゃいたが、欲しくなかった答えにがっかりする俺。ちょっと訊いてみただけだしと、道に転がる小石相手につぶやいてみる。
本日二度目の森に突入。気分はもう某テレビで有名になった探検隊だ。ちなみに隊長は音稀、さしずめ俺は隊員Fあたり。リアルすぎて笑えねえよ。
当然だが静まり返った夜の森は人っ子ひとりいねえ。たまに風になびく葉音やふくろうかミミズクか知らねえが鳥の鳴き声が不気味過ぎて、つぎにビビらされっとガチでチビる自信がある。
二台のスマホランプに照らされた森ンなかは昼間とは雰囲気がまったくと言っていいほど違っていて、進む道を間違えると確実に迷うこと請け合いだ。
けど、音稀が進む方角って……もしや──
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