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第二章 耽溺
第三十六話
しおりを挟むもう面倒になったんで今日から留守にするとぶっちゃければ、「知ってるわよ、私たちもキャンプに参加するから。私たちは家族だもの、楽しみは共有するものでしょう」と言われひと安心。説明することなく理解してもらえた。
いや待て。なんで魔女がキャンプいくこと知ってんだ。しかも参加するってなんだよ、そのうえ私たちってどういうことだ。
怒涛の疑問符が頭上でパレードしている。もう訳が分からん。呆然と立つ俺の背後から、音稀が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「一将さん、ごめんなさい。たぶん僕のせいかも」
「どういうこと」
「その、ね。キャンプに誘ってくれたつぎの日、着替えとか詰める大きなバッグを実家へ取りに戻ったんです。そしたら母に旅行バッグなんてどうするのと訊かれたから……」
「喋っちゃったのか」
「……はい」
ごめんなさいと謝る音稀。がっくりと肩を落としため息をつく俺。
いや、分かってる。音稀に悪気はねえって。たんに訊かれたから答えただけだ、母親にしたってストーカーの件もあるし把握しておきたかったんだろ。
自分にそう言い聞かせ納得すると、「音稀のせいじゃねえよ。いいさ、俺はおまえと一緒ならそれで」それから「音稀の家族は俺の家族でもあるしな」とフォローしておく。
すると音稀は眉を下げながら微笑み、「ありがとう」と俺に抱きついた。
けど実際滅入る。香奈と母親にタッグを組まれりゃ、俺すんげえ居心地悪りぃ思いしなきゃなんねえよ。ああ厄介だぜ……けど音稀のために我慢だ。
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