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第二章 耽溺
第二十六話
しおりを挟むだが音稀に関してはちょっとばかり厄介な問題を抱えていた。
思い返せば音稀と初めて逢った日、平日の真昼間からあいつは家にいた。魔女が会社に乗り込んできた腹いせに俺が自宅襲撃した日のことだ。
ニートかといえばノー。けど訳あって大学に行きづらい状況だ。
問題は音稀の見てくれ、女も羨む美貌にあった。聞いた話によれば、最後につき合った男には彼女がいたらしくて、それが彼女にバレて泥沼の修羅場となったそうだ。
もっとも男は自分に彼女がいることを隠して音稀とつき合っていたから、彼女の方も一応は納得してその修羅場は脱したそうだが。
けど一連の騒動が大学内に漏れ、音稀は白い眼で見られ針のむしろだという。保身に走った男が音稀に言い寄られて仕方がなくといったニュアンスで口外、迷惑していると吹聴されたそうだ。
一度でもマイナスのレッテルを張られてしまえば、いくら弁解しても弱者に耳をかたむけるものなどいない。悲しいかなそれが団体社会での現実、昨日の友は今日の敵。一気に四面楚歌とかふざけんな胸くそ悪りぃ。
また音稀の優しい性格も今回は悪い方へ作用した。あいつは男にも女にもモテる。だけど一途な性格だから二股なんてできるタマじゃねえ。
当然ながら気のないやつから告られてもその場で断わっていた。好きが溢れればいつか爆発しちまう、そいつが欲しくておかしくなってく。
手に入らなければ憎むことで自分の気持ちに折り合いをつけようとする。そんなやつらが全員、クソな男の虚言を信じたとしたら──音稀に味方はいなくなったというわけだ。
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