103 / 220
第二章 耽溺
第二十二話
しおりを挟む「──まだ奥さんのことが好きなんですか。もう別れたんでしょう、なのにどうして彼女の私物が部屋にあるのですか。おふたりは一将さんの浮気が原因で離婚されたんですよね、なのに別れた夫のマンションにあがり込むなんてどうかしてる」
キスが解け顔が離れると透かさず質問された。どう聞いても音稀の言葉は嫉妬だ、やべえ嬉し過ぎる。はやく誤解を解かなきゃなんねえのに、ぷくりと膨らんだ音稀の頬がリスみてえで可愛いニヤけちまう。
そろそろ本気でキレられては敵わねえ、事情を説明したうえで俺の今の気持ちを伝える。
「悪りぃ、俺いまニヤけてんだろ。音稀くんのヤキモチが嬉しくてさ。言い訳させてもらうと、確かに元嫁は部屋にきたけど一度きりだ。
金のことで不手際があったらしくてさ、通帳に金が振り込まれてねえって書類もって乗り込んできたんだよ。けどもう解決はしたし、二度とこの部屋には来ねえよ。
これからも子供とは面会するけど、だからといって元嫁とどうにかなるとか有り得ねえし。もう互いに進む道は違うんだ、これから俺の未来は好きなやつと歩いていきたい」
俺ゲイじゃねえと思うけど、でも音稀に対する気持ちは多分そうじゃねえかと思う。曖昧かも知んねえけど後悔はしたくねえから「俺さ、音稀くんのことが好きかも」と告ってみた。
すると音稀はあからさまにほっとした顔で「なんだ、よかった」とひと言。つづけて「僕も一将さんが好きです。もう知ってますよね」と笑う。
当然ながら俺に対する音稀の好意は初めて逢った日から気づいていた。それが嫌だとか不快だとか感じなかった時点で、俺も音稀のことを受け入れていたように思う。
つか男に欲情するわ、音稀に握られても萎えねえわで、考えりゃその時点で俺もゲイデビューしてんじゃねえか。でも俺の名誉のためつけ加えるが、ゲイなのは音稀専用ってことで。
見つめ合い笑いデコを重ねると、「じゃあ俺らつき合うか」と言ってみる。すぐに「はい。よろしくお願いします」と返事がもらえた。よっしゃ。
年甲斐もなく小躍りしそうな気持ちを抑え、「よろしくな」と想いを留めておく。そして「音稀と呼び捨てて欲しい」と言われ留めた思いが爆発、できたばかりの可愛い恋人を押し倒し──ワセリンを握りしめた。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる