98 / 220
第二章 耽溺
第十七話
しおりを挟む話がこじれると面倒だ、共有財産のことは両親には内緒にしておくか。結局はまだ俺も嫁に未練があんのかな、ゴミみてえに扱われてんのにな。切ねえな、おい。
結局はひとりでは決めらんなくて、弁護士にアドバイスをもらうことにした。すると返ってきた言葉は「共有資産を慰謝料として渡しては」というものだった。
自分の貯金を崩して支払うよりも手っ取り早く、しかも損した気持ちにならなくていいうえ清々しいと。いや、どこから払おうが出所は俺じゃねえか。
この弁護士大丈夫か、心配になってきたぞ。けど目からうろこなことを教えてくれたよ。「内容証明には共同貯金のことには触れていなかった」と。
そういや俺も見てねえ。あのアマ……嫁のくせにネコババする気だったなチクショー。
ひとかけらあった嫁への愛情も一瞬で消え失せたぜ。
慰謝料をぼったくった挙句に共有財産までがめようなんざ、妻として人としてどうなんだ。そりゃあ俺が浮気しまくってあいつを傷つけてきたのは認める、けどだからって根こそぎ金をむしり取ろうとか鬼で確定だろ。
弁護士には共同貯金の預金額の提示及び、慰謝料支払い後の残金の返金を求める旨を依頼した。そしたら俺たちは晴れて他人に戻る───
離婚して一か月がたった。
金銭で揉めて腹も立ったが、最後はスタートした日に戻って終わらせようということで、ガキを嫁親に預け夫婦として一日水入らずのデートを楽しんだ。
もっとギスギスとした嫌な気持ちになるかと思いきや、これで最後だと思えば名残惜しさが生まれてくるもんで。嫁も始終ニコニコとして俺のとなりを歩いてたしな。
役所が終わるまえに離婚届をふたりで提出。それから初めてデートした場所にいきさよならを告げた。もっとも初めての場所つったらラブホだけどよ。
けど嫁の腹にはガキがいんだ、最後まではシなかったけど──満足はした。
それからアパートまで送ってやって、握手をして別れた。これで俺たち夫婦のストーリーは終わり、だけど子供という絆は切れるもんじゃねえ。いつまでもつづいてく。
ごめん。それからありがとう。これからもよろしくな──────
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる