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第一章 変貌
第六十話
しおりを挟む夫の行方を追い連絡を待っていたのだろう、すぐに妻から返信のメールが届く。開かずとも内容は察しがつくが、興味も手伝い確認してみることに。
案の定メールに書かれる大半は画像に対し狼狽える文章で、最後に『直接会って話がしたい。電話をかけてもいいか』というもの。
もとよりこちらから出向くつもりだったのだ、メールは捨て置き妻にコールする。
「──はい、周防です。水緒さん落ち着いて。今から僕がそちらに伺いますので、詳しい話はそのときにしましょう」
タクシーを拾い向かうので四十分ほど待つようにと言い通話を終了した。
尻の合い間が焼けるように痛む。立っているだけでやっとの体力だが、西園寺を地獄に引きずり落とすことだけが周防を奮い立たせつき動かす。
濡れた髪をタオルドライして手櫛で整えると、クローゼットから適当に服を選び身につける。くだんの男は夢のなか、当分は目を覚まさないだろう。
蹴り殺してやりたい衝動をぐっと抑えてアパートを後にした。
「これはいったい何ですかっ。訳を話して」
西園寺の屋敷まえでタクシーを降りると、周防を待ち構えていた妻が強引に腕を引きリビングまで引きずり込む。矢継ぎ早に質問を浴びせる妻に望むまま真実をくれてやる。
「見た通りですよ。水緒さんの旦那は僕とそういう関係だったんです」
「そんな……うそ、うそよ、そんなの信じられない。だって男じゃない、あなたも藤隆さんも。だって私の夫なのよ、知ってるでしょう。なのにどうして──いやあっ」
貼りつけたような笑みを浮かべる周防を凝視しながら、妻は支離滅裂な言動をならべた挙句わけが分からず取り乱す。その様子は周防にとっての麻薬、心臓が痺れ更なる苦しみを欲した。
先般のプランどおり甘く優しい毒で彼女を侵し、徐々に心を壊してやろうと脳裡でレジュメを構成する。だがひと息につぶしては面白くない、まずは彼女を籠絡してやろうと考えた。
その場に泣き崩れる妻の許に腰を落とすと、甘くとろける低音で妻を口説く。
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