泣いて謝っても許してあげない

第一章 変貌

第五十五話

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　これまで西園寺とつき合ってきた二年という歳月。気をまわし仲を取り持ってくれたことや関係が修復できたこと、店長には世話になったと感謝を伝えた。

　そして今日あった経緯までをこと細かに話し、これから迷惑をかけるかもしれないと謝った。彼の妻から慰謝料請求の書類が届くかもしれないこと、もしかすると裁判の恐れもあると報告。

　今まで恩を受けた身で返すこともできないまま、重ねて迷惑をかけてしまうことを深く詫びる。辞表をだす覚悟もできている旨を伝えるが、けれど店長はいつもの調子で笑い飛ばす。

　人生のいい勉強になっただろうと。但しよそ様の家庭を壊す以上、その償いはきっちり取らなければいけない。必要とあらば邸だろうが裁判所だろうか出向いてやると言ってくれた。

　親妹弟の愛情に乏しい周防にとって、店長の優しさは胸に沁み涙がこぼれた。ありがとう、よろしく頼みますと、何度も礼を言い頭を下げる周防だった。

　店を出るころには陽が暮れ始めていた。本来ならば西園寺が戻ってくる頃合いだが、その代りに先ほどからしきりにスマホが鳴り響く。

　直接通話は拒否し、よってlineに通知が鬼のように届く。妻からも通話とメールが交互に届いており、周防はまずメール内容を確認した。

　予想通り周防が帰ってから西園寺と揉めたらしい。相手とはもう終わったと、縁は切れたから許してくれと涙ながらに告白されたようだ。しかも土下座のパフォーマンスも込みだ。

　どうして不倫がばれた男は土下座がセットされるのかと周防は呆れる。