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第一章 変貌
第四十話
しおりを挟むつぎの日。朝食を取るとラフな格好に着替えた西園寺は、玄関先で周防を抱きしめひたいに口づけをひとつ。昨夜つけた耳もとのキスマークを盗み見、柔く目を細めて愛しさを抱く。
「じゃあいい子で留守番してろよ。夕方までには戻る」
「うっせえな、子ども扱いしてンなっつの。……わあってるって」
くつくつ笑い軽く口唇を重ねると、「そうか。じゃあいってくる」と余裕の笑みを返して西園寺はドアの向こうへ消えた。
「ちぇ……ったく、あの絶倫おやじ。どんだけタフなんだよ」
恨めしそうに閉まるドアを睨み悪態をつく。どちらかというと彼より七つ年下である周防のほうが、清々しい朝にして疲れの色がにじみでているようだ。
それも致し方のないこと。毎夜のように閨事をくり返していれば、いくら二十一歳の周防でも体力に陰りが生じる。同性間のセックスにおいて、受け身である周防のほうが身体にダメージが残るのは当然。
けれど年々性欲の衰えを局部と吐精に感じるだろう西園寺に至っては、現在二十八歳にして毎夜の性行為を周防に求めまた楽しみ、一度では終わらず二度三度と欲するのだ。
おかげで周防は絶えず腰痛に悩むようになった。以前までは週に一度逢えれば御の字であったが、この二週間ぶっつづけで愛欲の相手をしているのだ腰も痛めるだろう。
「さあ、片付けますか」
丸めたこぶしで腰を叩きながら、ひとりごちながら踵を返す。
アパレルショップに勤務する周防の休日は平日だが、企業に定められた公休日が休日である西園寺に合わせ、ここ二週間は店長に無理を言って日曜に休みをもらっている。
ふだんの家事は洗濯や風呂洗い料理が関の山だが、掃除機をかけたり布団を干したりシーツを洗ったり平日にできないことを、周防はまとめて休日に済ませるのだ。
仕事を抱えたひとり暮らしの男など家事が疎かになるのは当然と言えばそうだが、けれど時間の許すかぎりできることをするのが周防のルールであり美徳だ。
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