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第一章 変貌
第三十六話
しおりを挟む終焉
居酒屋での一件から周防と西園寺の絆はより強くなった。
ほぼ毎日のように周防のアパートに入り浸るようになった西園寺と、それを嬉しく思う健気で愚かな恋に盲目となった周防。
求められるままに体躯をひらき、行為の最中に意識を失うほど抱き潰されても尚、周防の心は満たされ西園寺の愛を独占していると実感できた。
店長夫妻には心配をかけてしまったこと、壊れかけた関係を修復する架け橋となってくれたことの詫びと感謝の言葉を伝えると、ふたり睦む朗らかな様子に夫妻は手放しで祝福してくれた。
もちろんまだ問題は残ってはいるが、それでもひとつずつ片をつけ乗り越えていこうと約束し合っている。西園寺が既婚者であることには衝撃だったが、あえて誰にも口外はせず周防の心にしまっておくことにした。
現に約束の通り西園寺は居酒屋を出た後すぐに、妻と思しき相手に連絡を取り当分は帰宅しない旨をその場で伝えてくれた。
話の内容を聞かせるつもりで西園寺は周防の耳もとで会話した。妻に伝えたのは以下の三つ。恋人がいること、離婚の意志は固いこと、恋人宅で過ごすこと。
スマホの受話口からは女性らしき声が漏れ聞こえ、夫から突然の言明に驚き取り乱しているようだ。妻からしてみれば周防は愛人であり、夫を奪略した非道な泥棒猫と恨まれても仕方ない。
けれど恋する気持ちは止められない、ただ好きになったのが既婚者であったただけ。誰にも祝福されなくとも、罵倒され後ろ指をさされるいばらの道であろうと、心が示すまま想いに身を委ねたい。
朝は八時にアパートを出て職場に向かう西園寺を、周防は新妻よろしく愛妻弁当を手渡し彼氏を見送る。それから洗濯など時間があれば済ませ、周防も出勤するというルーティンだ。
西園寺が退社する時間は決まっておらず、凡そ十九時から二十二時とアバウトな帰宅となる。それまでに周防はスーパーで買い物を済ませ、食事と風呂の用意をして帰りを待つ。
そんな甘緩い日々と時間を過ごすこと二週間───
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