29 / 220
第一章 変貌
第三十話
しおりを挟む今は見たくもない光景ではあるが、街ですれ違う恋人たちはみな幸せそうで笑顔が絶えなくて、それぞれが今を生き愛を育んでいるのだと羨ましく思う。
けれどすべての恋人が幸せだけを温めているわけではなく、たまには喧嘩もして泣いてぶつかって仲直りをして絆を深めていく。温かそうに睦む彼らのなかには、浮気の末に心が離れることもあったかもしれない。それでも許し手をふたたび取り歩み始めるのだ。
はあ……、このままじゃいけないよな。ちゃんとあいつと話し合わなきゃ。
ショーウインドーに映る自身の表情がひどく情けなくて、そんな己に活を入れるように両手で頬を叩いて覚悟を決める。店長には世話と心配をかけてばかりだが、今夜だけはぐだぐだに甘え勇気の補充をさせてもらおう。
よしと気持ちを切り替えると待ち合わせの居酒屋に急いだ。
「……どうして」
「やあ。久しぶりだね、櫂」
温かなオレンジの光に包まれた店内。金属質な音色を響かせるピアノ曲が流れる贅沢な空間に、周防にとっては異質とも言える不協和音が鼓膜を刺激した。
店員に案内された個室のドアを開いた周防。目と耳に飛び込んできたのは店長ではなく、今日までのらりくらりと躱し距離を取っていた西園寺だった。
0
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる