3 / 40
月夜と王宮のマグノリア
第三話
しおりを挟む壁にかかる姿見に全身を映し身なりを確認すると、最後に笑顔をつくり「よし。今日も完璧だ、アンジェラス」と自分だけの呪文をかけた。
これは彼が恋する気持ちを心に宿した頃、自身を戒めるための言葉として、毎日こうして鏡に向かい言いつづけてきた呪文だ。
言葉が持つ魔力を心にかけることによって、アンジェラスの美しさは日を追うごとに輝きを増していった。
象牙のように滑らかな肌と血色のいい頬。
父親と母親から受け継いだ艶絹のトゥーヘアード。燃えるようなガーネットと清らかなサファイヤを配置した夢見るオッドアイは、長い睫毛で縁どられている。
流れるような柳眉につづく鼻梁は、まるで少女のように繊細だ。
朝露に濡れた薔薇の花弁を思わせる口唇はぽってりとかたちよく、それらパーツはうりざね型の小さなおもてへ完璧に配置されている。
服装にも気を配るアンジェラスは、貴族のたしなみであるレースをふんだんに取り入れ、華やかに着飾る令嬢たちのドレスにも引けを取らない。
アンジェラスの気品ある美しさと華やかな着こなしは、王宮に出入りする貴族たちのあいだでも人気で、ファッションリーダーとして男女問わず尊敬されファンまでいるようだ。
そうまでしてアンジェが外見にこだわるのには理由がある。ひとえに好きなひとの目にとまり、心を射止め同じだけの好きを返して欲しいから。
「はあ。今日はユエ、ぼくに笑いかけてくれるかな」
長いまつ毛が目許に影を落とす。窓からのぞくグランディー城に視線を送ると、嘆願するようにアンジェラスはつぶやいた。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる