秋良と伊織のHappy Ending

ぼくの楽しいハネムーン

第六話

　ウエイターがワゴンを引き現れる。

　アメリカの朝食では定番のエッグベネディクトや、卵の白身だけを使用したホワイトオムレツ。いかやオマール海老をつかったグリルなど、様々な料理がテーブルにならぶ。

「わあ、美味しそう。しかし、すごい量ですね」

「お腹に入るだけ食べな。僕はね秋良、きみが美味しそうに食べるところを見るのが幸せなんだよ。ふふ、僕のご馳走はいつだって秋良だからね」

　手にするブルーベリースムージーを落としそうになる。どうしてこのひとは、そんな歯の浮くようなセリフを軽々言えるのか。

　しかもそれがちっともおかしくない。基睦さんや慎弥さんが同じように口にすれば、鳥肌の挙句に悶絶するほど耐え難いだろう。

　けれど伊織さんが言うと、言葉が彼を選んだようにぴたりと添う。

　あらゆる意味で彼は次元の違うひとなのだと再認識し、そんなひとに恋人として選んでもらえたぼくはラッキーだと、心のなかで神様に手を合わせておいた。

　ぼくらが宿泊するホテルは、ビバリーヒルズでも有名なショッピング・ストリートであるロデオ・ドライブにあって、通りにはたくさんの料理店がある。

　高級料理店だけでなく、気軽に立ち寄り食べられるブリトーやクレープなどいわゆるジャンクフード店なども見かけ、今日はなにを食べようと考えるのも楽しみのひとつらしい。

　けれどそこは一味違う高級街だ。ジャンクフードといえど、熱量や塩分などは控えめに、ビタミンや繊維質など栄養バランスを考慮した、主に女性に優しいフードを提供している。

　今夜はどこに連れて行ってくれるのかな。

　いつか見た”世界の有名レストランガイト”に載っていた、ステーキレストランに行くのかな、だったら嬉しいなと胸を躍らせながらオムレツを口に運ぶ。

「んふふ。秋良は考えていることが手に取るようにわかるね。じゃあそこに行こっか」

「うえっ……うう、はい」

　ぼくの顔に書かれた心の声を読むと、伊織さんが願いを叶えるべく発言をし、食い意地の張った考えを読まれたぼくは恥じ入りながら返事をした。