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3rd round after
第59話「三周目〜本が好きな理由〜」
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二人が岡山に着いたのはお昼より少し前で、ここから特急に乗り換えが必要だった。更にその後、出雲大社に行くまでは何種類かの電車を乗り継ぐ。
斗哉はこんな長距離の移動を一人でしたことがなく、本当にスマホがある時代に生まれて良かったと思った。これがなければ、こんな所まで一人で来るのも苦労しただろうし、心細かったかもしれない。
(いや、一人じゃ、なかったか)
斗哉は後ろを物珍しげに見渡しながら着いて来る、心乃香の方を振り向いた。
「何?」
「何? じゃねえよっ。何だよそれっ? いつの間に買ったんだよっ」
「桃シェイク。岡山って行ったら、桃でしょ。あげないわよ」
「いらねーよっ」
(本当に、マイペースな奴)
こいつを見てると、すべてがどうでも良くなってくると、斗哉は呆れて溜め息を吐いた。
***
ここから出雲市まで約一時間。
電車に揺られてると眠たくなってくるのはどうしてだろうと、斗哉はウトウトしてきたが、心乃香はリュックから文庫を取り出すと、本を読み始めた。斗哉は書籍はもっぱら電子書籍派だ。電子書籍なら何処でも読めるし、がさばらない。
「如月って、本当に本好きなのな」
心乃香はその問いにすぐ答えなかった。しばらくすると、本を愛おしそうに見つめボソリと呟いた。
「本を読んでいる時は、世界から切り離されるから」
世界からの乖離――他者と関わりたくないと言う拒絶――
「如月は、何で着いて来たの? オレたちのこと大嫌いなんだろ。許せないんだろ。だったら本当は、放って置きたかったんじゃないのか」
斗哉は疑問に思ってたことを、一気に吐き出した。
「……私」
心乃香は、窓の外を見ながら呟いた。
「いつか何処かの孤島に移住して、一人でひっそり好きなことだけやって暮らしたい」
「は?」
「でも今は、無理なのは分かってる。親の扶養下にいるし、中学生が今の世の中、一人でなんか生きていけない」
「……親と仲悪いとか?」
心乃香は斗哉の問いに対して、呆れるようにフフッと笑った。
「そういうことじゃないのよ。全てのしがらみから解放されたいってこと。いくら他人と関わりたくないからって、陸の孤島にでも一人で暮らさなきゃ、どうしたって関わるってことよ」
「どうして、そんなに関わりたくないんだよ」
「他人と関わると、その人に気を遣ったり意見を合わせたり、嫌われないようにしたり……そういうことが、煩わしいから」
「それは仕方ないだろ。他人と関わるってそう言うことじゃん。それに一人って寂しくないか」
心乃香は、斗哉の杓子定規な答えにうんざりし嘲笑した。
「はっ、出た、陽キャの理屈。一人だと寂しいだろって決めつけ。寂しくなんかないわよ、別に。せいせいするわ」
斗哉を睨みつけると、心乃香は静かに呟いた。
「他人に傷つけられたり、傷つけたりするくらいなら、一人の方がずっといい」
「それじゃ、何で」
「今の普通に中学生やってる状態じゃ、どうしたって他人に関わる。五十嵐や菊池だってクラスメイトとして私に関わってる。関わってる以上は、どうしたって私の中から排除できない。消えたことが私の頭から離れない」
「それって……」
簡単に言えば、二人を心配してるってことじゃないかと斗哉は思った。心乃香が他人と関わりたくないと言う裏には、他人が自分にとって、大きな存在だからなんじゃないかと感じていた。
つづく
斗哉はこんな長距離の移動を一人でしたことがなく、本当にスマホがある時代に生まれて良かったと思った。これがなければ、こんな所まで一人で来るのも苦労しただろうし、心細かったかもしれない。
(いや、一人じゃ、なかったか)
斗哉は後ろを物珍しげに見渡しながら着いて来る、心乃香の方を振り向いた。
「何?」
「何? じゃねえよっ。何だよそれっ? いつの間に買ったんだよっ」
「桃シェイク。岡山って行ったら、桃でしょ。あげないわよ」
「いらねーよっ」
(本当に、マイペースな奴)
こいつを見てると、すべてがどうでも良くなってくると、斗哉は呆れて溜め息を吐いた。
***
ここから出雲市まで約一時間。
電車に揺られてると眠たくなってくるのはどうしてだろうと、斗哉はウトウトしてきたが、心乃香はリュックから文庫を取り出すと、本を読み始めた。斗哉は書籍はもっぱら電子書籍派だ。電子書籍なら何処でも読めるし、がさばらない。
「如月って、本当に本好きなのな」
心乃香はその問いにすぐ答えなかった。しばらくすると、本を愛おしそうに見つめボソリと呟いた。
「本を読んでいる時は、世界から切り離されるから」
世界からの乖離――他者と関わりたくないと言う拒絶――
「如月は、何で着いて来たの? オレたちのこと大嫌いなんだろ。許せないんだろ。だったら本当は、放って置きたかったんじゃないのか」
斗哉は疑問に思ってたことを、一気に吐き出した。
「……私」
心乃香は、窓の外を見ながら呟いた。
「いつか何処かの孤島に移住して、一人でひっそり好きなことだけやって暮らしたい」
「は?」
「でも今は、無理なのは分かってる。親の扶養下にいるし、中学生が今の世の中、一人でなんか生きていけない」
「……親と仲悪いとか?」
心乃香は斗哉の問いに対して、呆れるようにフフッと笑った。
「そういうことじゃないのよ。全てのしがらみから解放されたいってこと。いくら他人と関わりたくないからって、陸の孤島にでも一人で暮らさなきゃ、どうしたって関わるってことよ」
「どうして、そんなに関わりたくないんだよ」
「他人と関わると、その人に気を遣ったり意見を合わせたり、嫌われないようにしたり……そういうことが、煩わしいから」
「それは仕方ないだろ。他人と関わるってそう言うことじゃん。それに一人って寂しくないか」
心乃香は、斗哉の杓子定規な答えにうんざりし嘲笑した。
「はっ、出た、陽キャの理屈。一人だと寂しいだろって決めつけ。寂しくなんかないわよ、別に。せいせいするわ」
斗哉を睨みつけると、心乃香は静かに呟いた。
「他人に傷つけられたり、傷つけたりするくらいなら、一人の方がずっといい」
「それじゃ、何で」
「今の普通に中学生やってる状態じゃ、どうしたって他人に関わる。五十嵐や菊池だってクラスメイトとして私に関わってる。関わってる以上は、どうしたって私の中から排除できない。消えたことが私の頭から離れない」
「それって……」
簡単に言えば、二人を心配してるってことじゃないかと斗哉は思った。心乃香が他人と関わりたくないと言う裏には、他人が自分にとって、大きな存在だからなんじゃないかと感じていた。
つづく
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