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3rd round after

第50話「三周目〜最悪の予感〜」

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七月十七日 木曜日

 八神は大体、いつも遅刻ギリギリで登校して来る。まだ八神が教室に現れないのは、いつものことなのだ。私はそう思いながら、祈るような思いで静かに席に座って、八神が教室に入って来るのを待った。

 ただ、遂には担任が教室に現れるまで、八神が教室に入って来ることはなかった。

(消えた? 八神も消えたの?)

 私は自分の嫌な予感が当たってしまったと心臓がドキドキしたが、担任は出欠前に、八神は病欠だとクラスメイトたちに伝えて来た。私はそのことに逆に拍子抜けしてしまい、ホッと胸を撫で下ろした。

(何よ、紛らわしいわね、心配させないでよっ)

 私はそう頭に浮かんだことに気がつき、別に心配なんかしていないと、頭を振った。

 八神は菊池と五十嵐のことで、相当まいっているようだったし、その精神的ストレスが体にも影響を及ぼし、体調を崩しても仕方がなかったのかもしれない。

 弱者を平気で見下すくせに、なんて勝手なやつなんだろうと思ったが、八神もそうしなければ、自分を保てないような弱い部分があったのかもしれないと考えた。
 
 だからと言って弱者を笑者にするのは違うだろう、大変迷惑だと、やはり同情の余地はないなと考え直した。

***

七月十八日 金曜日

 今日は一学期の終業式。明日の連休から学校は夏休みに入ってしまう。なのに八神は登校して来なかった。具合が悪いのなら仕方がないが。

 私はこのまま八神の顔を見ることなく、長期の休みに入ることに、大変な胸騒ぎを感じていた。またもや最悪の思考が頭を過る。八神が死んだ時のような、あんなことに再びなってしまうかもと思ったのだ。

 いつもなら絶対こんなことはしないのだが、夏休みに入る前八神に渡さなければならないものを、彼の家に届ける役目をかってでた。

 担任は「お前たち、そんなに仲が良かったのか」と八神と私との関係を、いぶかしく思っているようだ。私はこの問いに対し、曖昧に返事をして、八神の家の場所を担任から聞き出した。

***

 私は終業式終了後、焦る気持ちを押さえられず、飛び出すように学校を後にした。

 何か最悪なことになっているかもしれない、そんな考えがどうしても拭えない。私は、担任に貰った八神の家の地図を片手に「落ち着け」と自分に言い聞かせた。

つづく
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