50 / 95
3rd round after
第50話「三周目〜最悪の予感〜」
しおりを挟む
七月十七日 木曜日
八神は大体、いつも遅刻ギリギリで登校して来る。まだ八神が教室に現れないのは、いつものことなのだ。私はそう思いながら、祈るような思いで静かに席に座って、八神が教室に入って来るのを待った。
ただ、遂には担任が教室に現れるまで、八神が教室に入って来ることはなかった。
(消えた? 八神も消えたの?)
私は自分の嫌な予感が当たってしまったと心臓がドキドキしたが、担任は出欠前に、八神は病欠だとクラスメイトたちに伝えて来た。私はそのことに逆に拍子抜けしてしまい、ホッと胸を撫で下ろした。
(何よ、紛らわしいわね、心配させないでよっ)
私はそう頭に浮かんだことに気がつき、別に心配なんかしていないと、頭を振った。
八神は菊池と五十嵐のことで、相当まいっているようだったし、その精神的ストレスが体にも影響を及ぼし、体調を崩しても仕方がなかったのかもしれない。
弱者を平気で見下すくせに、なんて勝手なやつなんだろうと思ったが、八神もそうしなければ、自分を保てないような弱い部分があったのかもしれないと考えた。
だからと言って弱者を笑者にするのは違うだろう、大変迷惑だと、やはり同情の余地はないなと考え直した。
***
七月十八日 金曜日
今日は一学期の終業式。明日の連休から学校は夏休みに入ってしまう。なのに八神は登校して来なかった。具合が悪いのなら仕方がないが。
私はこのまま八神の顔を見ることなく、長期の休みに入ることに、大変な胸騒ぎを感じていた。またもや最悪の思考が頭を過る。八神が死んだ時のような、あんなことに再びなってしまうかもと思ったのだ。
いつもなら絶対こんなことはしないのだが、夏休みに入る前八神に渡さなければならないものを、彼の家に届ける役目をかってでた。
担任は「お前たち、そんなに仲が良かったのか」と八神と私との関係を、訝しく思っているようだ。私はこの問いに対し、曖昧に返事をして、八神の家の場所を担任から聞き出した。
***
私は終業式終了後、焦る気持ちを押さえられず、飛び出すように学校を後にした。
何か最悪なことになっているかもしれない、そんな考えがどうしても拭えない。私は、担任に貰った八神の家の地図を片手に「落ち着け」と自分に言い聞かせた。
つづく
八神は大体、いつも遅刻ギリギリで登校して来る。まだ八神が教室に現れないのは、いつものことなのだ。私はそう思いながら、祈るような思いで静かに席に座って、八神が教室に入って来るのを待った。
ただ、遂には担任が教室に現れるまで、八神が教室に入って来ることはなかった。
(消えた? 八神も消えたの?)
私は自分の嫌な予感が当たってしまったと心臓がドキドキしたが、担任は出欠前に、八神は病欠だとクラスメイトたちに伝えて来た。私はそのことに逆に拍子抜けしてしまい、ホッと胸を撫で下ろした。
(何よ、紛らわしいわね、心配させないでよっ)
私はそう頭に浮かんだことに気がつき、別に心配なんかしていないと、頭を振った。
八神は菊池と五十嵐のことで、相当まいっているようだったし、その精神的ストレスが体にも影響を及ぼし、体調を崩しても仕方がなかったのかもしれない。
弱者を平気で見下すくせに、なんて勝手なやつなんだろうと思ったが、八神もそうしなければ、自分を保てないような弱い部分があったのかもしれないと考えた。
だからと言って弱者を笑者にするのは違うだろう、大変迷惑だと、やはり同情の余地はないなと考え直した。
***
七月十八日 金曜日
今日は一学期の終業式。明日の連休から学校は夏休みに入ってしまう。なのに八神は登校して来なかった。具合が悪いのなら仕方がないが。
私はこのまま八神の顔を見ることなく、長期の休みに入ることに、大変な胸騒ぎを感じていた。またもや最悪の思考が頭を過る。八神が死んだ時のような、あんなことに再びなってしまうかもと思ったのだ。
いつもなら絶対こんなことはしないのだが、夏休みに入る前八神に渡さなければならないものを、彼の家に届ける役目をかってでた。
担任は「お前たち、そんなに仲が良かったのか」と八神と私との関係を、訝しく思っているようだ。私はこの問いに対し、曖昧に返事をして、八神の家の場所を担任から聞き出した。
***
私は終業式終了後、焦る気持ちを押さえられず、飛び出すように学校を後にした。
何か最悪なことになっているかもしれない、そんな考えがどうしても拭えない。私は、担任に貰った八神の家の地図を片手に「落ち着け」と自分に言い聞かせた。
つづく
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【完結】碧よりも蒼く
多田莉都
青春
中学二年のときに、陸上競技の男子100m走で全国制覇を成し遂げたことのある深田碧斗は、高校になってからは何の実績もなかった。実績どころか、陸上部にすら所属していなかった。碧斗が走ることを辞めてしまったのにはある理由があった。
それは中学三年の大会で出会ったある才能の前に、碧斗は走ることを諦めてしまったからだった。中学を卒業し、祖父母の住む他県の高校を受験し、故郷の富山を離れた碧斗は無気力な日々を過ごす。
ある日、地元で深田碧斗が陸上の大会に出ていたということを知り、「何のことだ」と陸上雑誌を調べたところ、ある高校の深田碧斗が富山の大会に出場していた記録をみつけだした。
これは一体、どういうことなんだ? 碧斗は一路、富山へと帰り、事実を確かめることにした。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる