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1.5st round
第43話「一・五周目〜悪魔の囁き〜」
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「本当は後悔してるんじゃない? 八神斗哉に、あんなこと言ったのを」
「なんでアンタがそのこと、知ってるの」
「神様だからって言ったじゃん。それに八神斗哉は後悔してたよ、キミにしたこと」
後悔? あいつが?
「後悔をやり直したかったみたい」
そんなの、嘘よ。信じない。
「結構まいってたよ、アイツ。だから『代償』と交換で願いを叶えてあげようと、思ったんだけど」
黒猫は小首を傾げて続けた。
「叶える前に『命』を持ってかれて、死んじゃった! まさか命を持っていかれるなんて、本当に運悪いよなー」
願いを叶えて貰おうとして……命を持っていかれた?
それで、死んだ?
私はその猫の言葉に、思考が止まり掛けた。もし、もしもそれで命を落としたなら、八神は自分とのことを願おうとして死んだことになる。
やっぱり私の、私のせいだ……
私は八神の死を聞いてから、一切流れなかった涙を初めて流した。体からチカラが抜けていく。いつの間にか私はその場にしゃがみ込んだ。
「だから、キミのせいじゃない。あいつが勝手に死んだんだ」
そんな、そんな。嘘だ、嘘だよ……
涙が溢れて止まらない。私は嗚咽を漏らし、そのまま泣き崩れた。本当に私のせいだ。私が殺しちゃったんだ。
あんな奴死ねばいいと思ってたのに、さっきまで八神が死んだことは、もう仕方がないことだと思っていたのに、こんなっ。
私はその止まらない涙目の理由が、自分がしてしまったことへの罪悪感からなのか、八神を失って悲しいのか、もう分からなくなっていた。
程なくして、黒猫が私の膝をポンポンと叩いた。
「なんで泣くんだよ。キミのせいじゃないって、言いに来てあげたのに」
「……だって、私のっ、せい、だ」
「どうしたら、泣き止んでくれるんだよ。女に泣かれると、ボクも弱いよ」
「……分から、ないっ、よ……」
私は吐き捨てるように、嗚咽混じりでなんとか答えた。私の嗚咽と、ひぐらしの鳴き声だけが辺りに響いていた。
日が落ちた周りの景色は、どんどん闇に染まっていく。長いような短いような時間が流れた後、黒猫が私の顔を覗き込むように呟いた。
「……あいつが帰って来たら、もう泣かない?」
今思えば、それは悪魔の囁きだったのだ。
つづく
「なんでアンタがそのこと、知ってるの」
「神様だからって言ったじゃん。それに八神斗哉は後悔してたよ、キミにしたこと」
後悔? あいつが?
「後悔をやり直したかったみたい」
そんなの、嘘よ。信じない。
「結構まいってたよ、アイツ。だから『代償』と交換で願いを叶えてあげようと、思ったんだけど」
黒猫は小首を傾げて続けた。
「叶える前に『命』を持ってかれて、死んじゃった! まさか命を持っていかれるなんて、本当に運悪いよなー」
願いを叶えて貰おうとして……命を持っていかれた?
それで、死んだ?
私はその猫の言葉に、思考が止まり掛けた。もし、もしもそれで命を落としたなら、八神は自分とのことを願おうとして死んだことになる。
やっぱり私の、私のせいだ……
私は八神の死を聞いてから、一切流れなかった涙を初めて流した。体からチカラが抜けていく。いつの間にか私はその場にしゃがみ込んだ。
「だから、キミのせいじゃない。あいつが勝手に死んだんだ」
そんな、そんな。嘘だ、嘘だよ……
涙が溢れて止まらない。私は嗚咽を漏らし、そのまま泣き崩れた。本当に私のせいだ。私が殺しちゃったんだ。
あんな奴死ねばいいと思ってたのに、さっきまで八神が死んだことは、もう仕方がないことだと思っていたのに、こんなっ。
私はその止まらない涙目の理由が、自分がしてしまったことへの罪悪感からなのか、八神を失って悲しいのか、もう分からなくなっていた。
程なくして、黒猫が私の膝をポンポンと叩いた。
「なんで泣くんだよ。キミのせいじゃないって、言いに来てあげたのに」
「……だって、私のっ、せい、だ」
「どうしたら、泣き止んでくれるんだよ。女に泣かれると、ボクも弱いよ」
「……分から、ないっ、よ……」
私は吐き捨てるように、嗚咽混じりでなんとか答えた。私の嗚咽と、ひぐらしの鳴き声だけが辺りに響いていた。
日が落ちた周りの景色は、どんどん闇に染まっていく。長いような短いような時間が流れた後、黒猫が私の顔を覗き込むように呟いた。
「……あいつが帰って来たら、もう泣かない?」
今思えば、それは悪魔の囁きだったのだ。
つづく
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