【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン

カムナ リオ

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3st round

第38話「三周目〜謝罪〜」

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「ちょっとは楽しめたかって、聞いてるんだけど」

 オレは如月の豹変ぷりを、ただ黙って見ていた。

「あの告白、嘘だったんでしょ」
「……」
「それで、私を笑者にしたかったんでしょ」

 如月は冷ややかに据わった目で、オレを睨み上げながら小首を傾げる。

「あの眼鏡掛けた癖毛の……地味で暗そうな奴だよな」
「あー、あいつか。空気すぎて話したこともねーわ」
「男に免疫なさそーだから、告ったらめっちゃ慌てそうっ。想像しただけでウケるわ!」
「コロッと騙されそう! そのままやらせてくれるかもよ」

 一言一句覚えているこの執念。オレは改めてゾッとした。

「ああ言うことはさ、誰かが聞いてるかもしれない場所で、馬鹿みたいに大声で話さない方がいいよ? 誰が聞いてるか分からないから」

(……如月)

 如月はスッと立ち上がり、かつてないほどの冷たい眼差しでオレを見下した。

「あんたたちみたいなの見てると、虫唾が走るよ。他人の気持ちをまったく想像できない、平気で人を傷つける悪魔みたいな人間、本当に死んでほしい。私を馬鹿にしたあんたたちのこと、絶対許さないからっ」

 オレはゆっくりと立ち上がった。如月はそのオレの表情を見て、ハハハとあざけ笑った。

「何、ショック受けてるの? あんたたちがやろうとしてたことと、同じじゃない?」

 この後、二度と話しかけないでと、如月は去って行く。それをオレはただ見送って、それで終わりだ。終わり、だけど。

「……如月、ごめん……本当にごめん」

 思わず出てしまった言葉に、オレはハッとした。如月はその言葉に固まって驚いていた。しばらく沈黙が流れる。

「何、今更。……八神、一度言葉にしたことは、やってしまったことは消せないのよ。なかったことにできないの。言ったでしょ、絶対許さない」

 如月は踵を返すと、去り際にオレを睨んでこう続けた。

「もう二度と、話しかけないで」

 去って行く如月に、何も言い返すことなどできなかった。オレはただただ、そこに立ち尽くす。美しい花火の光が残酷にオレを照らし出した。

 どんな理由があろうとも、世界の摂理がどうであろうと、彼女を傷つけたことには変わりないのだ。

***

 ブブブーという、スマホのアラーム音で目が覚めた。オレは寝ぼけまなこでスマホをスヌーズしようとして、止めた。そのままスマホのカレンダーを確認する。

『七月十四日 月曜日』

 十三日を乗り越えた。やっと乗り越えられた。きっと今度はうまく行ったはず。

 ホッとしてスマホを胸に抱える。何事もない平和な日常が戻ってきたのだ。なのに、なぜか心にぽっかり穴が空いたようだと、オレは天井を見つめながら感じていた。

***
 
 変わらない、自分の部屋。
 変わらない、通学路。
 変わらない、学校。
 そして変わらない、教室。

 担任が朝の出欠をとっている。二十三番の如月が呼ばれた。如月が「はい」と返事をしていた。この日常を取り戻すのに、大変な回り道をした。

 そういえば、初めてやり直しを行った朝……あの声、どこかで聞いたことがある声だった気がする。

 まあ、そんなことどうでもいいか。もうすべて終わったんだから。

つづく
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