28 / 95
2st round
第28話「二周目〜整理〜」
しおりを挟む
どうしてこんなことになってしまったんだろう。オレは見慣れた自室の天井をベッドに寝転がりながら、ぼーっと見つめていた。
ゆっくりと目を閉じる。
息を大きく吸い込み、吐き出す。
吐き出す時に、少し気管が震えた。
さらに大きく吸い込む。自分を落ち着かせる時に有効な方法らしい。酸素が脳に行き渡り、物理的にリラックスできるそうだ。
こんな単純なことで、今の不安や緊張から解放させるなら苦労はないと思うけれど、今のオレには他にすがるものもない。
だが深呼吸を繰り返していると、不思議なことに脈が落ち着いてきた。
オレはゆっくりと目を開けた。
――整理しよう。
どうしてこんなことになったのか。
如月から告白ドッキリを仕返された祭りの夜、オレは神社の石階段から転げ落ち、瀕死の重傷を負った。
それを見かねた自称神の黒猫が代償と引き換えに、オレの時間を巻き戻し、怪我をする前の状態の体に戻してくれた。
その次の日、七月十四日、学校に行くと如月が消えていた。なぜか代償に「如月心乃香」が持っていかれたらしい。
それをなかったことにするために、もう一度代償を払い、今度は黒猫が最大限戻せる時間軸に戻ったはず――この時間軸では、まだ如月心乃香は消えていないはずなのに。
「……」
何だか頭が混乱してきた。こめかみが痛い。オレは目を細めて、答えを探すように宙を睨んだ。
「あっ」
突然、脳裏にある事象が飛び込んできた。脳のシナプスが繋がる感じを、身を持って体験する思いだった。
反射的に身が起き上がり、呼吸が苦しくなる。
(……もしかして。いや、そんなことで)
黒い不安がモヤモヤと胸に広がっていく。嫌な予感というやつだ。
オレは居ても立っても居られなくなって、気が付けば自宅を飛び出していた。
つづく
ゆっくりと目を閉じる。
息を大きく吸い込み、吐き出す。
吐き出す時に、少し気管が震えた。
さらに大きく吸い込む。自分を落ち着かせる時に有効な方法らしい。酸素が脳に行き渡り、物理的にリラックスできるそうだ。
こんな単純なことで、今の不安や緊張から解放させるなら苦労はないと思うけれど、今のオレには他にすがるものもない。
だが深呼吸を繰り返していると、不思議なことに脈が落ち着いてきた。
オレはゆっくりと目を開けた。
――整理しよう。
どうしてこんなことになったのか。
如月から告白ドッキリを仕返された祭りの夜、オレは神社の石階段から転げ落ち、瀕死の重傷を負った。
それを見かねた自称神の黒猫が代償と引き換えに、オレの時間を巻き戻し、怪我をする前の状態の体に戻してくれた。
その次の日、七月十四日、学校に行くと如月が消えていた。なぜか代償に「如月心乃香」が持っていかれたらしい。
それをなかったことにするために、もう一度代償を払い、今度は黒猫が最大限戻せる時間軸に戻ったはず――この時間軸では、まだ如月心乃香は消えていないはずなのに。
「……」
何だか頭が混乱してきた。こめかみが痛い。オレは目を細めて、答えを探すように宙を睨んだ。
「あっ」
突然、脳裏にある事象が飛び込んできた。脳のシナプスが繋がる感じを、身を持って体験する思いだった。
反射的に身が起き上がり、呼吸が苦しくなる。
(……もしかして。いや、そんなことで)
黒い不安がモヤモヤと胸に広がっていく。嫌な予感というやつだ。
オレは居ても立っても居られなくなって、気が付けば自宅を飛び出していた。
つづく
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】ぽっちゃり好きの望まない青春
mazecco
青春
◆◆◆第6回ライト文芸大賞 奨励賞受賞作◆◆◆
人ってさ、テンプレから外れた人を仕分けるのが好きだよね。
イケメンとか、金持ちとか、デブとか、なんとかかんとか。
そんなものに俺はもう振り回されたくないから、友だちなんかいらないって思ってる。
俺じゃなくて俺の顔と財布ばっかり見て喋るヤツらと話してると虚しくなってくるんだもん。
誰もほんとの俺のことなんか見てないんだから。
どうせみんな、俺がぽっちゃり好きの陰キャだって知ったら離れていくに決まってる。
そう思ってたのに……
どうしてみんな俺を放っておいてくれないんだよ!
※ラブコメ風ですがこの小説は友情物語です※
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる