【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン

カムナ リオ

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1st round

第9話「告白ドッキリ 如月心乃香sideーその3」

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 お祭りデートに行く前に、私は八神のことを調べることにした。敵を知らずして戦えないと思ったからだ。

 フルネーム『八神斗哉やがみとおや
 
 見た目通りのチャラチャラした人間で、クラスでは目立つ方だ。自分とは対照的な人間だと思った。くだらない連中とよくつるんでいて、割とモテるようだ。こんな奴を好きになる子の気がしれないが、他人の趣味に口を出すつもりはない。

 部活には所属しておらず、暇を持て余しているようだ。何かに夢中になれれば、人を見下す計画を立てるような馬鹿なこともしないだろうにと私は思った。「暇」と言うのは本当に人をダメにする。
 
 それにきっとこういう人間は、何かに夢中になるなんてことができないのだ。だからそう言った、何かに一生懸命に取り組んでいる人を「必死かよ」と馬鹿にする。哀れで可哀想な人間なのかもしれない。

 勉強はそこそこできて、運動神経は良いようだ。その能力を活かしてどこぞの運動部にでも所属すれば、毒気が抜けてまともになるかもしれないのにと考えたが、八神のような捻くれた根性の持ち主では、部内で問題を起こしそうだとも思った。

 あの日に告白ドッキリを立案した他の男子のことも突き止めた。八神とよく連んでいる、菊池と五十嵐だ。声の感じからしても間違いない。この二人にも是非とも復讐したかったが、あまり動くと気づかれるかもしれない。今回はターゲットを八神に絞ることにした。

 そんなことを授業中考えながら、ふっと八神の方を見遣ったら八神と目があった。何か気取られたかもと焦ったが、まだ何もアクションを起こしていない。大丈夫だと自分に言い聞かせた。

 目が合ったついでに少し慌ててみたら八神が意識するかもしれないと、少々わざとらしいと思ったが、気のあるふりをして慌てて前に向き直ってみた。

 祭りまで一週間足らず。その間に何とか八神をその気にさせなければならない。あんたたちが私にしようとしてたこと、そっくりそのまま仕返ししてやるよ。

***

 決戦だと意気込んだものの、八神を振り向かせる作戦が具体的に思い浮かばない。
 
 自分は常に負けている側の人間だったので、異性から告白された経験もない。大体、誰かから好かれるような「勝ち組」の人間だったら、今回の告白ドッキリのターゲットなんかになっていないはずだ。

 私は自分の周りの「モテる女子」のことを思い浮かべた。文芸部の安西先輩。女の自分から見ても綺麗で大変可愛らしい気がする。男受けもいい。ああ、そう言えば。

 体育館裏で咄嗟に演じたキャラは、無意識に安西先輩をモデルにしていたかもしれないと、私は思い出した。どんな時でも笑顔を振り撒き、控えめで、健気で、甘え上手、男の庇護欲を刺激する。よくよく考えると流石だと思った。
 
 以前、安西先輩がこんなことを言っていたことを思い出した。「男子はさりげない、ボディタッチに弱い」らしい。正直それは先輩の容姿あってのもので、自分なんかがやっても逆効果な気もする。

 ただ元々あんな完璧な容姿なのにもかかわらず、更に自分を可愛く見せるため、日々精進し、自分を殺し男に媚びて、異性にモテる先輩の努力を思うと、「勝ち組」は勝つべくして勝っているとストンと心に落ちた。

 私には、とても真似できないと思ったからだ。だが今回はそんなことを言っていられない。八神を何としても自分に振り向かせるため、安西先輩以上の努力が必要だと、私は覚悟した。

つづく
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