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1st round
第5話「告白ドッキリーその5」
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(こんなことならあの告った日、さっさとドッキリだって告白しておけばよかった)
隣を歩く如月は「凄い人だね」と少し祭りの気に当てられた様に、上ずって笑っていた。表情がいつもより明るい気がする。陰キャなんて思えないほどに。普通に可愛い女の子だ。
不意に如月がふらつく。元々鈍臭いのに、下駄を履いているせいで、足元がおぼつかないんだろう。オレが腕を掴んで支えてやると「ごめん、歩き慣れなくって」と、ハハハと如月はすまなそうに笑った。その笑顔にオレは堪らず、如月の手を握ってしまった。
「あっ、いや、危ないからさ」
手を握られた如月はギョッとしていたが、しばらくして、オレの手を握り返してきた。
自分の喉が鳴るのを感じた。
ヤバイ、ドキドキしてきた。
手を繋いだまま神社内の参道に向かう。道の周りには沢山の屋台が出ており、華やかでいい匂いがして、隣に彼女の温もりを感じて、オレは夢心地だった。
(……オレ本当に、如月のこと)
売店には凄い人で中々近寄れず、流される様に本堂の参道前の開けた所に出た。ここはまだ人混みがマシで、神社関係者が何やら呼び込みをしている。神社なのに俗っぽいなと思ったがその呼び込みに釣られて、ペアの御守りを買わされる羽目になった。
海が近いからかその御守りは、小さな貝と鈴が付いており、二つ合わせると二枚貝になるらしく、一つとして同じものはらないらしい。
如月は物珍しそうに、真剣にその片方の自分の分を見つめていた。気に入ってくれたのかなと、オレはこういうものを持つことに抵抗があり、正直気恥ずかしかったのだが、如月が気に入ってくれたのならそれでいいやと思った。
***
「そろそろ花火が始まるな。ここだと人多くて、ちょっと見づらいよな。移動する?」
「なら、ちょっと歩くけど、私いいところ知ってるよ」
そう微笑んだ如月の顔はどこか妖艶で、ドキッとした。
隣町の神社だったので、オレはあまり土地勘がなかった。二人は本堂の横道を抜けると竹林の小道を通り、如月は申し訳程度に舗装された階段の上を指差した。
「この先だよ」
街灯も申し訳程度で、どこか心細い場所だ。ここまで来ると人がまばらだった。
階段はかなりの長さだった。下駄の如月を気遣いながら登った。オレが場所を変えようと言ったからか。着慣れない浴衣と履き慣れない下駄で、わざわざ花火の見やすい場所に案内してくれているのかと思うと、オレは如月が愛おしくなった。
(あいつらに、馬鹿にされてもいい。もう、オレ……)
ここまで登って来ると爽快だった。夜風が気持ちいい。ちょうど花火が夜空に咲き出した。綺麗だな。お堂の奥に案内されると、ちょうど座れそうなスペースがあり、如月はふうっとそこに腰を下ろした。
「大丈夫か」
「うん。大丈夫だよ。見てっ。花火、すごく綺麗だね」
オレも如月に習って隣に腰を下ろした。花火の光に照らされた、如月の顔がすぐ横にある。ずっと見つめていると、それに如月が気が付いた。
「見ないの?」と小首を可愛らしく傾げてくる。しばらくして、如月が顔を近づけて目を閉じた。オレは吸い寄せられる様に、如月の唇に自分の唇を寄せようとした。
その時――
如月が肩を震わせながら、クククと笑い出した。オレは何が起きているか分からず、その場で固まった。
「ちょっとは楽しめた? 八神君」
如月はそう言いながら、ゆっくり目を開けた。その表情は、オレの知っている如月のものとはまるで別人だった。
つづく
隣を歩く如月は「凄い人だね」と少し祭りの気に当てられた様に、上ずって笑っていた。表情がいつもより明るい気がする。陰キャなんて思えないほどに。普通に可愛い女の子だ。
不意に如月がふらつく。元々鈍臭いのに、下駄を履いているせいで、足元がおぼつかないんだろう。オレが腕を掴んで支えてやると「ごめん、歩き慣れなくって」と、ハハハと如月はすまなそうに笑った。その笑顔にオレは堪らず、如月の手を握ってしまった。
「あっ、いや、危ないからさ」
手を握られた如月はギョッとしていたが、しばらくして、オレの手を握り返してきた。
自分の喉が鳴るのを感じた。
ヤバイ、ドキドキしてきた。
手を繋いだまま神社内の参道に向かう。道の周りには沢山の屋台が出ており、華やかでいい匂いがして、隣に彼女の温もりを感じて、オレは夢心地だった。
(……オレ本当に、如月のこと)
売店には凄い人で中々近寄れず、流される様に本堂の参道前の開けた所に出た。ここはまだ人混みがマシで、神社関係者が何やら呼び込みをしている。神社なのに俗っぽいなと思ったがその呼び込みに釣られて、ペアの御守りを買わされる羽目になった。
海が近いからかその御守りは、小さな貝と鈴が付いており、二つ合わせると二枚貝になるらしく、一つとして同じものはらないらしい。
如月は物珍しそうに、真剣にその片方の自分の分を見つめていた。気に入ってくれたのかなと、オレはこういうものを持つことに抵抗があり、正直気恥ずかしかったのだが、如月が気に入ってくれたのならそれでいいやと思った。
***
「そろそろ花火が始まるな。ここだと人多くて、ちょっと見づらいよな。移動する?」
「なら、ちょっと歩くけど、私いいところ知ってるよ」
そう微笑んだ如月の顔はどこか妖艶で、ドキッとした。
隣町の神社だったので、オレはあまり土地勘がなかった。二人は本堂の横道を抜けると竹林の小道を通り、如月は申し訳程度に舗装された階段の上を指差した。
「この先だよ」
街灯も申し訳程度で、どこか心細い場所だ。ここまで来ると人がまばらだった。
階段はかなりの長さだった。下駄の如月を気遣いながら登った。オレが場所を変えようと言ったからか。着慣れない浴衣と履き慣れない下駄で、わざわざ花火の見やすい場所に案内してくれているのかと思うと、オレは如月が愛おしくなった。
(あいつらに、馬鹿にされてもいい。もう、オレ……)
ここまで登って来ると爽快だった。夜風が気持ちいい。ちょうど花火が夜空に咲き出した。綺麗だな。お堂の奥に案内されると、ちょうど座れそうなスペースがあり、如月はふうっとそこに腰を下ろした。
「大丈夫か」
「うん。大丈夫だよ。見てっ。花火、すごく綺麗だね」
オレも如月に習って隣に腰を下ろした。花火の光に照らされた、如月の顔がすぐ横にある。ずっと見つめていると、それに如月が気が付いた。
「見ないの?」と小首を可愛らしく傾げてくる。しばらくして、如月が顔を近づけて目を閉じた。オレは吸い寄せられる様に、如月の唇に自分の唇を寄せようとした。
その時――
如月が肩を震わせながら、クククと笑い出した。オレは何が起きているか分からず、その場で固まった。
「ちょっとは楽しめた? 八神君」
如月はそう言いながら、ゆっくり目を開けた。その表情は、オレの知っている如月のものとはまるで別人だった。
つづく
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