【完結】願いが叶う本と僕らのパラレルワールド

カムナ リオ

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相葉悠一 番外編

第65話「願い叶えの本製作委員会」

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「ワタクシたち“願い叶えの本製作委員会”は現在、恋を題材にしておりまして、白紙の本に、さまざまな恋の妄想……いや、夢を映しとっていく活動をしております」

「……」

「選ばれた方が、この本のページを捲るとその白紙のページに、その方の“恋の願い”が映し出されるという寸法です」

「……」

「そして、活動に協力していただいたお礼として、わずかばかりの“対価”をお支払いいただきますが、その映し出された“恋の願い”をそのまま叶えて差し上げる。ここまではよろしいですか」

 正直、なにがなんだか分からないんだけど。まずどういった仕組みで、この白猫が本から飛び出て来たのかとか、なんで猫が喋っているのかとか、この猫はなにを言い出したのかとか。

 人間って理解出来ないことを前にすると、本当にピクリとも動けないものなんだな。目の前の喋る白猫は、しばらくするとハアッと深い溜め息をつき、次には前脚の爪を立て、オレの頬を思いっきり引っ掻いて来た。

「ぎゃっ」
「夢ではございません」
「な、何すんだっ」

 頬を触ると引っ掻かれた頬から、生暖かいヌルッとしたものが伝って来た。慌てて指で触ると、赤い液体が伝っていた。しばらくすると頬がジンジンしてくる。

 痛いし、現実?

「失礼しました。あんまりほうけられているのが、面倒だったもので。で、早速、ページを捲っていただきたいのですが、って、聞いてます?」

 頬からの出血に、さらに唖然としているオレに、しびれを切らし、猫はやれやれとオレを憐れむように目を細めた。

「この本に辿り着いた方というのは、ある種、夢みがちなのです。心のどこかでは“奇跡”を信じてる。だから、非日常的なことが起きても、わりと受け入れられる度量があるものなのですが。アナタ、案外現実主義なんですね」

 オレはあまりのことに言葉が出なかった。

「仕方ない。これなら少しは現実だって、受け入れて貰えるかもしれないですね」

 そう言うと、白猫の体は光り出した。その光は膨らんで、どんどん大きくなっていく。オレはその眩しさに、思わず目を覆った。網膜に眩しさを感じなくなって、オレは恐る恐る目を開けた。

 机の上には、うちの学校の制服を着た色素の薄い青年が、足を組みながら座って、こちらに笑いかけていた。


つづく
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