【完結】願いが叶う本と僕らのパラレルワールド

カムナ リオ

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相葉悠一 番外編

第63話「渡された本」

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「ねえ、知ってる?」
「あのウワサこと?」
「そうそう」
「学校内のどこかにある」
「不思議な本」
「選ばれた者にしか、見つけられない」
「信じる者にしか、開けない」
 
「“恋”の願いが叶う、不思議な本――」

***

 渡辺は、持っていたカバンを開いた。

「これ、あなたに譲るわ」
「えっ」
「書籍整理を手伝ってくれた、お礼」
  
 渡辺はそう言うと、カバンの中から赤い本をオレに差し出した。

 お礼?
 それにこの本、どこかで。

 本を差し出した渡辺は……優しく、そして悲しそうに笑っていた。

***

 渡辺を家まで送ったあと、自宅に戻ったオレは簡単に着替えを済ませて、机の上に置いた、渡辺から渡された赤い本を眺めていた。

 表紙になにも描かれてはいないが、いたって普通の、ハードカバーの本だ。

 あのウワサを知らなかったころのオレなら、「なんだろ、この本は?」と気軽に開いていただろう。いや、そうでなくても、開いていたかもしれない、いつものオレなら。

 本を渡して来たときの、渡辺の顔が忘れられない。その表情はこの本が「本物だ」と言っているようだった。

 願いが叶う本――

 バカバカしい。あり得ない。
 あり得ないのに。

 だいたい本物だとして、どうして渡辺は、その本をオレに譲ったんだろう。多感な年ごろの女子高生、オレなんかより、よっぽど叶えたい願いがあるんじゃないだろうか。

 オレはしばらく色々な可能性を模索してみたが、結局は分からないことだらけだ。

 だけど、もし、本物だとしたら。

 オレはゴクリと唾を飲み込むと、目の前の赤い本の表紙を捲った。


つづく
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