今日僕は仕事をサボった。

モブ

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起きると雨が降っていた。

ベットの横の窓を打ち、落ちては溜まり
水滴となって流れてはまた落ちる。 

日本語には雨を表現する言葉が
400を超えるらしい。

それらは等しく情景を捉え
季節や強さまでも表現するけど
その殆どが雨の厳しさや冷たさ、
哀しさを表す。

それをびや情緒と読んだりすれば風流だし
農業の一つでもしていれば
恵みの雨とでもなろうものだが、

生憎、都会で大多数を占める会社員から
すれば只の面倒くさい気象情報の一つに過ぎない。

残念な事に自分もその会社員はぐるまであり、
個人的には居ても居なくても変わないのに
一応、表面上だけでも揃わないと
会社組織という名の無機質な機械は
動かないらしい。

そんな訳で準備をする訳だが
やはり風呂場でお湯を出した後に
シャンプーを買い忘れたことに気付き

2日目も薄めたシャンプーで禊をした。

いつもの様に支度をし家を出た。

道端の雑草はとてもじゃないけど
この雨を喜んでる様には見えず
ビニール傘はバタバタと雨の音を響かせる。

家を出てすぐの横断歩道で
赤信号に引っかかった。
車も来てないし行くかと迷っていると
今から幼稚園に行くであろう母子が来た。

子供は楽しそうに水溜りを長靴で突いている。

別に長靴が濡れても困るものでもないのに
やめるよう言う母親の気持ちが
何となく分かってしまう僕は

もう2度と、
買ってもらったばかりの傘を
使いたくて雨を待ったあの頃には
戻れないのだろうと思う。

街の空気を湿らせ続ける雨と
濡れたアスファルトの臭いから逃げたくて
好きでもない会社に
いつもより多めに靴を濡らして向かった。






雨も上がり晴れ間が除いた休憩終わり
自分の部署に戻ると部内が慌ただしかった。

原因は
客先から一本の電話から

「本日、納品予定の荷が来てない」
とのことだった

結果として
すぐに足りない分の発注をかけ、
手の空いている者が受け取りに行き
そのまま納品した事で解決したのだが

その客先が問題だった
うちの部署で1番の得意先であり
何十年と付き合いのある工場とのことで
僕も課長に連れられ1度だけ挨拶に行ったのだが、
会う前に何度も課長から言葉と礼儀には
くれぐれも気を付けるよう念を押された

「探せば安い所は他にあるんだが、
ウチは個人経営の工場、
一つのミスが命取りだからこそ
徹底してミスがないを選び続けるよ。
これからよろしくね。」

と激励とも圧とも取れる言葉をかけられた。

端的に分かりやすく言うと
昔気質の人で業界内でも
かなり厳しいと有名な社長だった。

そして今回の取引は
新規事業に伴う取引。

これは客先の社運を左右するもので
社長は気合を入れ生産ラインを増やし
機械を導入する為に
銀行から融資の借入もしていた。

とは言え個人経営の工場、
生産ラインを1度でも止めてしまうと
納期に間に合わず倒産の危機もあった。

事なきを得たとはいえ
倒産の危機を招いた我が社に対して
社長は大激怒という訳で
ウチとの今後の取引も考えているという

そして今回それを担当したのは




あの、未来の自分を重ねた
先輩社員だった。





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